団体戦
決 勝

 高田商業(奈良県


整列。さあ、いざ戦わん札幌龍谷!(左から四人目・谷岡)



三番手勝負、谷岡布美・渡辺晶子(龍谷一年生ペア) 対 水原佐起子・瀧井ゆかり(高田)
写真は3−3で迎えた第7セット、ファイナルでの谷岡ファーストサーブ


ファイナルの末、最後は7−2で谷岡・渡辺の勝利。龍谷初優勝の瞬間



ゲームセット後、龍谷チームのウイニン行進。選手は感極まり皆が涙。父兄も涙、そして涙…



 
 札幌龍谷学園高校2−1高田商業(奈良県)
     藤田・谷本 1−4竹内・斎藤○
               (D−3)
               (1−C)
               (2−C)
               (1−C)
               (1−C)


     滝本・高塚さ4−3新関・久保
              
 (1−C)
                (C−0)
                (3−D)
               (D−3)
               (E−4)
               (5−F)
               (F−3)


   
○谷岡・渡辺 4−3水原・瀧井     
              
 (C−1)
                (C−0)
                (C−1)
               (2−C)
               (2−C)
               (1−C)
               (F−2)
  

いよいよ天下分け目の決勝戦、今大会の最終ゲーム。
相手は春の選抜の覇者でもあり、数々の歴戦を制してきた強豪・高田商業。しか
もエースは前日、個人戦優勝者の竹内・斎藤と違いなく今大会優勝候補bP。ま
ず、試合に先立ち、審判団と監督・選手が場内アナウンスで紹介され、決戦のム
ードも高まる中、一番手、二番手が同時スタートでプレー開始となったのは夕闇
迫る午後6時6分。  
第一ゲームは、龍谷:藤田・谷本と高田:竹内・斎藤。立ち上がり藤田・谷本の
動きがよく一ゲーム目をゲット。このまま、あわよくばとも思ったが相手はさす
がにエースで今大会個人戦の覇者。ここから自分のペースに持ち込み、終わって
見ると残念ながら1−4ワンサイドゲーム。しかし、藤田・谷本は最初のセット
を取り、ひるまずに横綱相手に敢然と勝負を挑んだファイトは見事であった。  
第二ゲームは、龍谷エースの滝本・高塚さ、高田bQである新関・久保の戦い。
こちらはどちらも実力ペアでどちらが勝ってもおかしくない対戦。

試合の流れはまさに死闘、シーソーゲーム。双方共に意地の張り合い、ファイン
プレーが随所に見られ、共に譲らず一進一退のファイナルゲームへともつれ込む。 
高塚も鋭い切れ味のボレーを決めれば、滝本も力強いストロークと粘り強いプレ
ーで、信じられないようなスーパーショットを連発。その度に会場内でどよめき
が起きる。
決勝戦に相応しい長時間の好ゲームも、最後まで集中力を欠かさずにプレー、最
後は優勝したいという気持ちが上回った滝本ペアがファイナルゲームを7−3で
圧倒し、チーム対戦成績を1−1とする。
隣のコートではシーソーゲームが行われる中、藤田・谷本が戦った後のコートに三
番手の谷岡・渡辺が高田の水原・滝井に挑む。これまで谷岡の相方は中学三年間
を含め全て高塚みなみ(さやかの妹)オンリー。
今回ペアを組む渡辺は、中学時代はいつもライバルとして個人戦決勝で戦ってき
た間柄であったのが、今日は大舞台で初めてコンビを組むことになった。果たし
てこの大一番で一年生コンビが名門の三年生相手にコンビネーションはどうなの
か、息が合うのだろうか、などの不安がよぎる…。
ドキドキしながら、試合前の乱打を見ていると一年生コンビの気合が凄い。ボー
ルを打つ姿に負けられないという気迫がこもっているのが分かる。

決勝戦、独特の緊張感が会場を包む中、谷岡のサーブで試合開始。
第1セット〜3セットまでは谷岡の正確なベースライン、ミドルを狙ったストロ
ークトが好調。同じく渡辺も後から藤堂監督に「やることなすこと全てあたって
いた」と言わしめる程、シャープな動きと適切な位置取り、無駄のないプレーで
確実にポイントを重ねていき、あっという間に3−0の一方的なスコアに。
二人の共通項は失敗を恐れない積極性と攻めのテニス。予想以上にコンビネーシ
ョンがよく、二人がリズミカルに絡んでおり、急造ペアとは思えぬ出来映え。
第二コートでの試合が気になる。三番手ペアが頑張っても、二番手が負けてしまえば今
のプレーがノーゲームとなってしまう。ましてや、第二試合の一つひとつのプレーにセン
ターコートが大きくリアクションする状況下、気になってしかたがない。
取り敢えず、谷岡ペアの方はリードしているから、先ずは第二ゲームの行方が気になる
ので、そちらを重点的に応援。
初めは、声を張り上げる度に皆が私の方を振り返り恥ずかしいとも思ったが、ここまで
来たら、そんなことはどうでもいい。とにかく龍谷が勝てばいいのだ。応援するために
来たのだからバカボンのパパではないが、これでいいのだ。

第三ゲームが3−1で谷岡・渡辺がリードしたところで、取っては取り返される
といった壮絶な試合となった第二ゲームの試合は、最後は滝本ペアたちがついに
勝利をもぎ取る。
凄い、滝本・高塚。この大事な試合を本当に良く頑張った、有難う。そして、ご
苦労様。

話は元に戻り第三ゲーム。さすがは強豪チーム。ここから後衛得意のバッククロ
スが随所で決まるなど、巻き返しを始め、気がつくと3−3のタイスコア。この
まま相手ペースで、負けてしまうのだろうか…。
さあ、いよいよ、大会最後の試合の最終第7ゲームが始まる。このセットで優勝
が決定する大切なファナルゲームが始まる前、藤堂監督から谷岡・渡辺は「思い
切ってやってこい。そして攻めのテニスを…」と激を飛ばされコートへと戻リ、
戦闘再開。気がつくと辺りはすっかり夜の帳が落ち、照明がやけに眩しい。

1本目〜サーブは谷岡。短いラリーが続いた後、相手の上げたロブが舞がり、絶
    好のチャンスボール。しかし、ここで珍しく渡辺のスマッシュがネット
    に引っかかり0−1。ああ、これがプレッシャーというものか、ミスの
    少ない渡辺が…。
2本目〜谷岡のサーブ。谷岡が相手コート左に強気でストロークを打ち込み、二
    本目のコートぎりぎり、深めのストレートは相手がネットに引っ掛け1
    −1。
3本目〜相手のサーブ。前衛、後衛合わせて15本の息の抜けない壮絶なラリー
    の応酬。さすがに決勝戦のファイナルだ、見応えがある。こうなればミ
    スをした方が負けとなるが、最後は相手の苦し紛れに打ったロブがオー
    バー。最後まで攻めて、攻め抜いた末のこの一点は実に大きい、スコア
    は2−1。
4本目〜相手のサーブ。谷岡の深めラインぎりぎりのロブで相手の返球が浮いた
    ところを渡辺が鮮やかにポーチボレーを決めて3−1。この辺からコー
    トの選手と一体となり、ベンチも監督、選手がポイントを上げる度に飛
    び上がっての声援が続く。応援も押せ押せの北海道、札幌龍谷のこんな
    派手な応援光景は見たことがない。
5本目〜渡辺のサーブ。谷岡が相手コートの左隅へ強烈なストロークを打ち込み、
    この返球がネットして4−1とリード。龍谷ペアの徹底した強気の攻め
    が目立つ。
    ゲームメイクは左右に振り、ツイストで揺さぶり、ボースラインぎりぎ
    りと深めを狙い、ミドルの攻めなど、常に龍谷が仕掛ける。
    一方、高田商はファイナルになってからは、慎重になり過ぎ、守勢一方。
    また、渡辺、谷岡共ミスがない。
6本目〜渡辺のサーブ。谷岡の深めのロブがオーバーし4−2。狙いはよかった
    のだが、少々、ラインオーバーとなる。しかし、攻めているので仕方が
    ない。まだ、まだ勝負はわからない。
7本目〜相手のサーブ。サーブを谷岡がツイスト。慌てて前衛がダッシュし返す
    もボールが浮き、これを渡辺がすかさずハーフボレーで相手コート深め
    へ返球、高田商がこれを返せずに5−2。
8本目〜相手のサーブ。サーブを渡辺がツイストし返球。その後、11本の息の
    抜けない長いラリーが続き、最後は谷岡のフォア強打を相手がネットし
    て6−2。いよいよ、マッチポイント。しかし、勝負はまだまだ分から
    ない。これまでも後一本で、どれだけ悔しい思いをしてきたことか。
9本目〜プレー前に高田ペアが長いインターバルをとって気合を入れ直す。谷岡
    のサーブで始まり、2〜3球打ち合った後、最後は渡辺がネット際で小
    さく相手コートに返した球を滝井がネットに引っ掛けゲームセット。
    時計を見ると7時4分、試合開始から丁度一時間が経過、暑くて熱い夏
    の戦いは龍谷高校の初優勝で幕が降ろされた。

ついにやった、札幌龍谷学園高校、インターハイ初優勝だ。それにしても最後に一年生
ペアがファイナルにもつれ込みながらも、最後は強気で攻め抜いて有名校の三年生ペ
アであるあの水原・瀧井ペアをなぎ倒すとは…。
その瞬間、渡辺、谷岡が大きく両手を上げ、何度も飛び上がりそして抱き合う。渡辺が、
谷岡が、挨拶前にもう泣いている。そして、ベンチでも監督、選手が抱き合う。
真っ先に藤堂監督が笑顔でコートに飛び出し、渡辺、谷岡を両手に抱きかかえる。日頃、
リアクションが少ない監督が…。監督さんも本当に嬉しかったのだろうと思う。
「練習で泣いて、試合で笑え」という横断幕が同高校にあるが、ここではベンチも全員が泣
き、代わる代わる抱き合っている。
そういう親もその瞬間、皆が飛び上がり、肩を抱き合い、握手をし、感動の涙を流し、勝利
を分かち合っている。うれしいなぁー、優勝がこんなにいいものとは…。本当に子どもたち
に感謝である。

布美が中学2年の夏、自分には忘れられない思い出がある。時は平成12年8月。所は九
州は福岡市で開催された「第31回全国中学校ソフトテニス大会」。静内第三中学校は順
調に駒を進め、準決勝で強豪・埼玉県芝東中学校との対戦。
一番手、渡辺(静内)・高塚さがファイナルの接戦になったが、粘りのテニスで勝ち。二番手、
藤田・小池はファイナルゲームまでもつれ、マッチポイントを握るまで進めたが逆転負け。
三番手、谷岡・高塚みも、途中3−2とリードしたが、これまたファイナルゲームとなり、最
後は芝東の中尾・河原ペアに敗れ、あのアジア大会会場ともなった憧れのセンターコート
での試合が目前で消えてしまった。
この大会で学んだものは一点の重さ、大切さ。勝敗は最後の最後までわからないといった
勝負のあや。そして、最後に勝つ者こそ力があるのだということであった。
それ以来、後一本と優勝という言葉に拘って試合を見てきた。だからこそ、今回の札幌龍
谷学園高校の優勝は、私個人にとっても嬉しい限りであり、更に嬉しかったのは当時、対
戦相手の河原さんのお母さんに祝メールを送って喜んでいただいたが、今回、その河原さ
んのお母さんから2年振りにメールが届き、心温まる文章に改めて感激したことである。
お互いに同期生として切磋琢磨し、腕と技を磨いて欲しいと思うし、この二人が個人戦を
戦うなどのことになれば、どんなにか素晴らしいことかと思った。




そしてもう一つ。時は三年前にさかのぼり、平成11年8月19日。所は新潟県新潟市庭
球場で開催された第30回全国中学生ソフトテニス大会。当時、布美が静内第三中学校
1年の時、団体戦の二回戦で対戦したのが、優勝候補の筆頭に挙げられていた名門、
近畿・奈良県代表・片塩中学校。

今回決勝戦で対戦した水原(二番手)、瀧井(一番手)は当時、共に三年生で聞きしに
勝るスター選手。
試合は片塩の水原・西村ペアが一番手勝負で第三中、渡辺・高塚さやかペアと対戦し
た。ところがこれが壮絶な試合となり、シーソーゲームの結果、3−3のファイナル勝負
へと持ち込まれた。
結局、ゲームは、形勢不利のまま2−6まで追い込まれマッチを握られたものの、ここか
ら奇跡の追い上げが始まり、結局は8−6で第7セットを奪取、4−3で勝った。

この試合での渡辺は、少し前にお母さんを亡くしたばかりで精神的にもハンディがあった
にも関わらず、不屈の精神力で見事、逆転。私はこの神がかり的な試合を見て、当然の
ように本人も素晴らしかったが、ここぞという時、天国のお母さんが力を貸してくれたと思
わざるを得なく、そう思うと胸がきゅんとなり涙が止まらなかっことを思いだす。

第二試合で谷岡・高塚みなみペアは片塩の新子・瀧井ペアと当たったが、前試合の余韻
が尾を引き、意気上がる第三中、気落ちする片塩中の図式となり、結果は、思いもよらぬ
一方的な試合となり、4−1で一年生ペア谷岡・高塚が勝ち、静内第三中が準決勝へと
駒を進めた。

この時、スタンドの最後列で応援をしていた片塩中の父兄が、まさかの敗戦にがっくりと
肩を落とし、一人の父親が「勝負はやってみなぁー、分からん…もん…」と関西弁で小さ
な声で呟き、会場を後にしたことを今でも、鮮明に覚えている。


今回の水戸での決勝戦は奇しくもその時対戦したメンバーであり、奈良は三年生、北海
道は一年生。勝てるとは思わなかった北海道が強豪相手に勝利した。という項も同じで、
非常に因縁めいたものを感じた。
何年後に、また、どこかで戦う時のであろうが、今度は果たしてどのような結末が待って
いるのだろうか?。今から楽しみである。

本大会を振り返ると、藤堂監督の采配、アドバイスのもと、諏訪コーチの家族ぐ
るみの支援もあり、選手が一戦ごとに調子を上げ、自信を深め、尻上がりに成長
していった。

ほとんどの選手が小学校、中学校時代から北海道代表選手として、数多くの全国
大会に出場、幾度も修羅場を潜り抜け、団体優勝を何度も経験している経験と自
信があるので、普通は極度に緊張する準決勝、決勝戦でも遺憾なく実力を発揮、
のびのびと本来のプレーが出来たことも大きかった。

また、何よりもキャプテン谷本を中心とした選手間のチームワーク、まとまりの
よさもこのチームの特徴で、団体戦になり、そのまとまりのよさが遺憾なく発揮
できたことも大きかったよう思う。

更に、龍谷選手のモチベーションの高さも勝因の一つで、必ず全国制覇をするん
だという藤堂監督のイズムが選手たちにも浸透し、異常?とも思える地獄の猛練
習にも耐えた選手に拍手を贈りたい。
<独断と偏見の大会選手評>
○滝本〜プレー面では三年生・滝本が、落ち着きと安定感、しかも力強いスト
    ロークで、無言の内にチームを引っ張った印象が強い。フットワーク
    に優れ、技術的にも完成度が高く、身体を張って最後まで諦めないそ
    の姿は、相手には本当に嫌な存在だったと思う。
特に、準決勝、決勝戦
      でのここ一番のプレーは、ポイントゲッターとしても目を見張るものがあった。
      今大会、北海道の大将に相応しい活躍に拍手をおくりたい。
○高塚姉妹〜このチームは、高塚姉妹抜きには語れない。共に前衛の高塚さや
    か、高塚みなみは、中学生時代から北海道代表選手に選ばれている。
    持ち前の運動神経の良さと抜群のセンス、そして器用さでその場面で
    的確にボレー、スマッシュを決め、ポイントゲッターとしてチームを
    勝利に大きく貢献。
    2人ともまだ、二年生と一年生。二人が励ましあい、競い合うことで
    互いにレベルと腕を磨き、今後どれだけ伸びるか、将来が楽しみでし
    ょうがない。
    (姉・高塚さやか〜平成14年ハイスクールジャパンカップ2位)
    (妹・高塚みなみ〜平成13年度全日本中学生ランキング第5位
○谷本〜もう一人の前衛、キャプテンでもある谷本は、試合ごとに責任感とテ
    ンションを上げてゆき、思い切りの良いプレーでコートいっぱいに走
    り回った。まさに最後の年に自分の集大成を見せた感がする。ボレー
    を決めた後の躍動感が彼女の全てを物語る。今大会は、チームリーダ
    ーに相応しい存在とその活躍に何度も胸が熱くなった。
○藤田〜藤田は中学生時代から試合を見てきたが、当時と比較しストロークの
    安定とメンタルでの成長が大きいと思う。元々、武器である強烈なフ
    ォアは天下一品の選手。今大会でも後衛二番手の役割を十分に果たし
    チームに貢献した。特に準々決勝、準決勝での粘りは成長の跡を如実
    に示すもので見事な活躍を見せた。
    (平成14年ハイスクールジャパンカップ2位)
○渡辺〜一年生・渡辺は、三番手であるため実際に試合に登場したのは決勝戦
    が第一試合であるが、そのハンデキャップを感じさせない三番手勝負
    での活躍は素晴らしいの一言。道内大会でもペアを組む同じ一年生・
    伊藤と道内大会でも堅実なプレーを見せ、常に好成績を残した自信か
    らくるプレーに安定感が増した。積極的で前向きなプレー、明るいキ
    ャラはいつ見ても好感が持てる。
○谷岡〜攻めの姿勢と思い切りのよいプレーが身上の一年生。道内大会でもマ
    ッチを取られてから、まくって最後は勝ちに結びつける試合が何度か       
    あったが、小さな体ながらフットワークとピンチになればなるほど発
    揮する度胸、勝負強さは小学生時代からの持ち味。決勝戦のファイナ
    ルは、本人らしさが出たナイスゲームであった。

      (平成13年度全日本中学生ランキング第5位
 
 
以上、本大会、独断と偏見の私の選手感でした。各選手の今後、更なるご活躍を
お祈りしております。