第41話〜キビタキ

 鮮やかな黄色は妖精の印


●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内全域(森林) 
  北海道で一番美しい季節は、みずみずしい緑に野山がおお
われる新緑の頃だといわれる。
  この新緑の季節にキビタキはインドシナ、ボルネオなど、南
方から渡ってくる。
  昨年6月。早朝、カワセミの撮影で町内御園に出かけた。
残念ながら、狙ったカワセミは撮れなかったが、代わりによく
茂った落葉広葉樹林の中でキビタキの雄を見つけた。
  いや、突然、目の前に現われてくれたと言った方が正しい。
初めての対面であったが、それは、森の妖精のようで、天使
のように眩いばかりに光り輝いていた。それほどまでに、キビ
タキの雄は美しい。
  胸と腰の目の覚めるような黄色、上面の黒色。お尻の清純
な白色。鮮やかである、爽やかである。見張り用の枝に止まり、
飛んでる昆虫を追いかけ、空中でキャッチするが、止まり木が
決まっており、必ずそこに戻り餌を食べる。 
  雄の美しさをほめたが、雌もまた、オリーブ色の羽とやさしく
愛らしい目は、とても気品がある。 
 地味で、清楚ではあるがこれまた、森の妖精の名にけして
恥じることはない。  


第42話〜オシドリ 


 毎年変わる゛連れ添い゛


●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内全域(川・沼)
  オシドリといえば“おしどり夫婦”。仲がよく、睦まじく、仲の良
い夫婦の例えとして引用され、日本画のモチーフにも、夫婦仲の
良い鳥として良く登場する。 
  野鳥の中でもその美しさは1、2といわれる雄の銀杏羽(いち
ょうばね)は、実に絢爛豪華。そして、離れることなく、つつまし
やかな雌は、寄り添うようにいつも行動を共にする。
  主役たる男子に、脇役たる女子が、いつも後から離れることな
く付いてくる。男尊女卑?とまではいかないが、日本人好みの、
描いたような夫婦像が見えてくる。
  しかし、意に反して実像は少々異なる。一生、連れ添うように
見える雄のお相手は、毎年変わり、残念ながら生涯を通じたパ
ートナーとはならない。察するに、オシドリの生態を知らずして、
人間の願望が先行し、いつの日か、“おしどり夫婦”を偽造してし
まったようだ。
  静内では、他の夏鳥より一足早く、4月中旬には小さな沼、
流れの遅い河川などで、仲の良い(?)“おしどり夫婦”を見るこ
とができる。

  
第43話〜アオジ

 たくましい゜カァチャン゛


●区分/夏鳥(4〜10月)  ●場所/町内全域(山野)
  「チッチョチチリー」と木の梢のから澄んださえずりが聞こえ
てくる。
 今年も元気者のアオジがやってきて、早速、縄張り宣言を始
めたらしい。
  居心地がよいのか、静内ではこのアオジが多い。真歌、御
園、高見と、どこにでも姿を見せる。とりわけ、5月初旬の高見
では数が多く、双眼鏡をのぞくと、次から次へと頻繁に出てく
る。
  というのも、アオジは限られた土地にひしめきあう傾向があ
り、当然、その結果、テリトリーをめぐっての争いとなる。領空
侵犯の頻度も高く、スクランブルも多くなり、し烈な空中戦とな
る。
  ここまでは、よくある光景。しかし、アオジは面白い、オス同
志が一騎打ちをしていても、自分の亭主が形勢不利と見るや、
なんと、奥さんが毛を逆立てて戦闘に参加する。
  つまり、亭主の危機をかぎつけて、妻までが参加し、四つど
もえの戦争となるから、カンボジアのポル・ポト軍も顔負けの呈。
  カミさんが強いのは、なにも人間社会に限ったことではない。
野鳥の世界もやはりというべきか、真にたくましいのはカアチャ
ンなのである。

  
第44話〜オオルリ 

 透き通った声に神々しい姿


●区分/夏鳥(4〜10月)  ●場所/町内全域(森林)
  みずみずしい新緑に野山がおおわれる春。若葉が萌え、薫
る風。そんな風景にオオルリの姿はよく似合う。
  雄の頭と背は、目を覚ますような光沢のある瑠璃色。深みの
ある青色を見ていると、どんな色をもってしても、この見事な天
然色にはかなわぬと思えてくる。
  さえずりは、のびやかで美しく「ピールリー、ポピリー、ルルッ、
ギチ」と自慢げに歌う。きまって林の上、それも周囲が見渡せる
木々の梢でさえずるので、遠くまで美声は響き渡る。
  背筋を伸ばし、さえずるさまは、正装と蝶ネクタイで身を飾り、
声高らかに歌い上げるオペラ歌手を連想させる。そういえば、
日本三名鳥と言えば、ウグイス、コマドリにこのオオルリであった。
  低山の渓谷に面した森林に生息するが、静内では、真歌、うぐ
いすの森、田原、高見とどこにでも顔を見せてくれる。
  森林に生息する数多くの野鳥の中で、キビタキとオオルリは、
神秘的な美しさという点では双璧だ。透き通った声、神々しい姿。
やっぱり、この世に、天使は実在するのだ。


第45話〜モズ

 歌って踊ってプロポーズ


●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内全域(林・野) 
  「百舌」。モズを漢字で書くとこうなる。辞書を引くと[百鳥の
音を真似るところから百舌の義]。
  さらに「ブッチャーバード」という、モズの英名。意味はなんと
虐殺者。名前からして怪しげであるが、どうも、この鳥“得たい
知れず”といった印象が強い。
  そのモズを語るにふさわしいのが「はやにえ」という特異な
習性。秋から冬にかけ、木の枝や有刺鉄線に、捕らえたカエル
や昆虫などの餌を刺したり、引っかけたりする。
  では、このモズ独特の行動、なぜゆえに行われるのだろう
か。食料が足りなくなる冬に向けての貯食説、殺りく本能説、
食べ残し説、なわばり宣言説と様々な説があるが、真相は謎
のまま。加えて、繁殖期の行動も変わっている。雄は、雌に向
かって頭を左右に振り、プロポーズするが、なぜか、他の鳥の
声を真似て歌う。
  歌うだけでなく、踊りまでも披露し、彼女を口説くというから、
人間顔負けのテクニシャン。
  私たちが知らない、いろんな野鳥の営みがある。そして分か
っているのは、ほんの一部に過ぎない。