第36話〜コ ゲ ラ
縄張り性が強い 頑固者?
●区分/留鳥(通年) ●場所/町内全域(森林)
突然ですが、ここで野鳥クイズを一つ。問い「キツツキという
鳥はいるでしょうか?」。
答えは「YES」ではなく「NO」である。
実は、この世にキツツキという鳥は、存在しない。 正確にいう
とコゲラ、コアカゲラ、アカゲラ、オオオアカゲラ、ヤマゲラ、クマ
ゲラと北海道には6種類のキツツキ目・キツツキ科の野鳥は生
息するが、キツツキという名の鳥はいない。
沢山いるキツツキの仲間の中で、体長15pと一番小さいのが
コゲラ。静内では、真歌、二十間道路、高見と平地から山地の
林で生息する。
幹の下から上、枝から枝、そして隣の木へと忙しく動き回るた
め、見付けるのも結構大変である。
しかし、「ギィーッ、ギィーッ」という独特のあの鳴き声さえ聞
きわければ、すぐに見つける事ができる。
体が小さく、自由に往来が可能なのだろうが、なわばり性が
強く、自分のテリトリーから出ていかない。そんな生き方に、な
ぜか共感するものを感じる。
そう言えば「ギィーッ」という鳴き声は、一筋縄でいかない、
頑固者の叫びに私には聞こえてくる。
第37話〜アカゲラ
二十間道路を代表する野鳥。
●区分/留鳥(通年) ●場所/町内全域(森林)
幅36m(二十間)、延長8qのビッグスケール。日本一の桜の
名所「二十間道路」は、私の住む郷土・静内の自慢であり、誇り
である。
この二十間道路を代表する野鳥といえば、やはりアカゲラであ
ろう。なんといっても桜のピンクには、アカゲラの頭頂の朱色がよ
く似合う。
夏〜爽やかなそよかぜと緑の草原。餌も一番豊富な時、自由自
在に飛び回る。
秋〜紅葉に染まる木立ちの中で、相変わらずせわしく木から木
へと動き回る。
冬〜大自然は厳しい。辺りは吹雪き、じっと幹にしがみついて離
れない。
春〜そして、待ちに待った春。桜の幹に開けた素穴の中で、元気
に育つ雛。いくら与えても餌をねだる幼鳥たち。親が一年で
一番忙しいのがこの繁殖期。
キツツキ類は、どこにでも木に穴を開け、けしからんと、考えて
いる人がいるかもしれない。しかし、心配御無用。虫がいる木以
外は、穴は開けず、むしろ、弱った木に風通しを良くし、木を再生
させる。
野鳥たちは、大自然の摂理の中で、きちんと自分たちの役目
を果たしながら、健気に生きている。
第38話〜ヤマゲラ
本道にしか住まぬ変わり者
●区分/留鳥(通年) ●場所/町内全域(森林)
まず、この鳥の人顔を見て欲しい、いや鳥相を見て欲しい。穏
やかなというより、愛らしい顔がキツツキ類の特徴なのに、どうい
う訳か、この、どうも持ち味が違うようだ。
鋭い目、とがった嘴、精悍な顔。他のキツツキは皆、色合いは、
黒が基調だというのに、このヤマゲラだけは、ウグイス色という変
わり者。
そして、もう一つ。ヤマゲラは北海道にしか住まないが、本州
には見た目そっくりの親戚(亜種)アオゲラという仲間も生息する。
まったくの“得体知れず”といったら言い過ぎか。それほどの強
烈な個性の持ち主である。
静内では、林のある所であれば、どこにでも生息し、真歌地区、
二十間道路などで普通に観察できる。写真のアオゲラの親子は、
二十間道路で撮影した。なんとか、親子が揃った写真を撮りたい
と思い、毎日通いつめた。
ついに6月22日、撮影に成功したが、数えてみると巣を発見し
てからちょうど1か月目であった。
野鳥の撮影くらい、不確実で時間を要するものはない。だから、
上手に撮れた時の嬉しさは格別である。
第39話〜クマゲラ
貫録十分キツツキの王様
●区分/留鳥(通年) ●場所/町内全域(森林)
国指定天然記念物。日本では、北海道と東北地方の一部に
生息。体長45p、国内最大のキツツキ。
その名の通り、全身真っ黒。雄の額から後頭部までの鮮や
かな赤。精悍な面構え、「キョーン、キョーン」と辺りに響き渡る
声量ある鳴き声。全身からほとばしるキツツキ類の王者の貫禄。
森林面積の減少で個体数も減り、滅多にその勇姿を見るこ
とも出来なくなった。
野鳥ファンなら、だれもが一度はこの目で見たいと願う憧れの
鳥ではあるが、イメージと実像は違う。小さな小鳥くらい、一飲
みしそうな風貌をしているのに、主食は、なんと小さなアリ。ク
マゲラがアリしか食べないなんて、正直いって幻滅。知らなか
った方が、ましというもの。
事実、雛に餌を与えているこの写真も、親は飲ん込だアリを、
雛のくちばしの中に吐きもどすようにし、給餌をしている。
しかし、クマゲラはクマゲラなのである。静内で、クマゲラ親
子の写真なんか撮れると思っていなかったから、撮影に成功
したときは、とてもうれしかった。そして、感動で涙が止まらな
かった。
第40話〜ホオジロ
春を告げるメッセンジャー
●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内全域
小春日和とはいえ、まだ冷たい風は、肌をさすように寒い。
所は、日本一の桜の名所「二十間道路」。桜の樹上から爽や
かなさえずりが聞こえてくる。さえずるというよりは、あたかもオ
ペラ歌手が、ステージで声高らかに歌い上げるといった感。文
句なしの声量と、派手な口上。
よく聞くと「一筆啓上、仕侯」(いっぴつけいじょう、つかまつり
そうろう)とも聞こえてくる。
野鳥のさえずりを、語句に置き換え文章化したものを“聞き
なし”という。有名なところでは、センダイムシクイの「チョチョジ
ー…」が、「焼酎一杯グィー」となる。誰が作ったか知らないが
傑作である。 春先に、この鳥を探すには苦労はいらない。
木立ちの中で、几帳面に背筋を伸ばすようにし、歌っている
野鳥を探せばいいからである。静内川、二十間道路。つまり川
や林、開けた所であれば、どこにでも姿を見せてくれるサービ
ス精神旺盛な野鳥でもある。
元気なさえずりを聞くと、私には、地上の草木や動物たちに、
天が「春が来たぞ」と知らせるように頼んだメッセンジャーボー
イに思えてならない。