第31話〜キセキレイ

 セキレイ仲間で数が多い


●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内の河川
  セキレイの3番手は、背中が黒く、お腹が黄色。セキレイ類で
最も上品で、その気品は、いわば女王様のようである。
  セキレイ類は、細身のスマートなボディに加え、体長20pの
内、尾が半分の10pを占める。だから、可憐でキュートに見え、
まことに美しい。
  この長い尾を四六時中、上下に振るので、俗に「石たたき」の
名が付く。
  中国で最古の詩集『詩経(しきょう)』の中に「鶺鴒原(せきれ
いげん)に在り、兄弟難を急にす」という詩がある。これはセキ
レイが、兄弟仲が良く、飛びながらも鳴き、歩きながら尾羽を振
るので、兄弟が互いに何かあった場合でも、救いに行くようだ」
という意味である。
 少々、道徳的であるが、セキレイの性質をよく観察していて面
白い。
 セグロセキレイ、ハクセキレイは河川の河口付近、そしてキセ
キレイは上流と他のセキレイとは、きちんと住み分けが出来て
いる。晴れた春空、草木の眩しい緑。澄みきった清流に、あの
せせらぎの音。
  キセキレイほど、なぜか、忘れかけているのどかで懐かしい、
昔の日本を連想させる野鳥はいない。


第32話〜カワセミ

 今は環境のバロメーター 



●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内の河川
  数多い野鳥の中で、一番人気の野鳥といえば、やはりカワセ
ミであろう。
 細長く、太く、とがったくちばし。鮮やかなコバルトブルーと緑
暗色の背。
情熱的な腹のオレンジは、実に色彩鮮やかである。水面を一直
線に飛ぶ姿。「チチィー、チチィー」と愛らしい鳴き声。魚めがけ、
水面に勢い良く飛び込む勇敢さ。
 「翡翠(ひすい)」「魚狗(ぎょく)」「魚虎(うおとら)」「魚師(ぎょ
し)」カワセミの和名の数々。それぞれが、特徴をいい当ててい
て、粋である。
 江戸時代初期の俳句に、「翡翠といふ鳥は、いかなる美人の
魂にかあらむ」と歌われている。その昔から、やはり人の心を
捕らえて離さなかったようである。
  しかし、時代と共にカワセミの存在も変化した。美しい姿から
羨望の的であったものが、現代では水質汚染、土手の改修工
事など、環境問題のものさし的存在に変わった。
  川が汚れると魚はいなくなる。魚がいなければカワセミだって
住めなくなる。時は流れても、カワセミの美しさは変わらない。
 共存できる、きれいな川や水辺も、いつまでも変えてはなら
ない。
 

第33話〜アオサギ

 圧巻 数百羽のコロニー


●区分/留鳥(通年)  ●場所/町内の河川
  国内に生息する19種のサギの内、体長92aと最大級。 私の
ところに、よく野鳥に関する問い合わせや情報が寄せられる。
 誤報で多いのが「鶴を見た」という情報である。  北海道に生
息する鶴は、タンチョウ以外にいないから、まずは有り得ない話
であるが、せっかくのご厚意であるから、一応は現地へ出かけ
る。
  そこで見るのは、川辺をのしのしと歩く、アオサギの姿という結
果になる。
  アオサギは、基本的には夏鳥である。冬になると暖かい場所
に移動する。しかし、静内では、少数が越冬する。
  繁殖地では、大きな木がある林で、集団で生息、コロニーを形
成する。
日高管内では、三石町の蓬来地区、門別町の里平川で、数百
羽の規模の見事なコロニーがある。
  静内では、これ程のものはないが、静内川などの川岸に5月
下旬、大きな巣を作り繁殖する。他の野鳥類とは、首をZ形に曲
げて真っ直ぐ飛ぶので、すぐ識別できる。
  食欲旺盛で、河川、水田、などで多量の魚を食するが、町内
の釣り堀にひんぱんに現れ、商品の魚を失敬する張本人でも
ある。

 
第34話〜コヨシキリ

 体に似合わず大きな声


●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内全域
  体長14aとスズメより小さな夏鳥。
  この小さな体で、カンボジア、中国南部など、東アジア中部(イ
ンドシナ)からはるばる渡ってくる。
 日本には北海道と本州中部以北に渡来、繁殖し、静内には5
月下旬くらいから姿を現す。
  その名のとおり、ヨシ原、ヨモギ、ススキなど、背丈の高い草
むらを好み、数本の茎の間に枯れ草でお椀形の巣を作る。ヒタ
キ科らしい細く突き出たくちばしで、クモ、昆虫を食する。
  繁殖期には「カカチ、チリリ、キョッキョチ」と、小さな体に似合
わず、大きな声量で、灌木の枝先に止まり、延々とうるさいくら
いにさえずる。
  7〜8年前、派手に鳴くコヨシキリと初めて出会った時のこと。
夢中でシャッターをきっていたが、気が付くと、側では“構っても
らえない”と、まだ2歳になったばかりの長女が、寂しさと悔しさ
で派手に泣いていた。
  そのうち、家内が凄い形相で走って来て、「鳥と娘とどちらが
大事か」と私に諭した。
 コヨシキリのさえずりを聞く度に、長女へのふびんの思い出が
頭をよぎる。


第35話〜オオヨシキリ

 昼も夜も゛騒音゛の鳴き声


●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内全般
  オオヨシキリを探すには、手間はいらない。
  「ギョギョシ、カチカチカチ」と、辺り一面に響き渡る大きな声
でさえずるので、すぐ発見できる。
  大きな口を開け、中の赤い喉を見せながら、鳴いているとい
うより、騒音に近いこの声は、それ程に迫力がある。昼間だけ
でなく、夜間でもやかましく鳴き続けるので、まったく始末が悪
く、時には、睡眠不足になることもあるほど。
  さえずりからから命名したのか、この鳥に「行々子(ぎょうぎょ
うし)」という名が付いているが、まったくそのとおりだ。
  体長18aと仲間のコヨシキリより一回り大きく、静内川など、
町内の河川のアシ原で生息し、繁殖する。これほどの声量だ
から、精力旺盛なのかどうかは知らないが、一夫多妻が多い。
雄は通常、数羽。多いときには5羽の雌を従えるというから、
私には、羨ましい限りだ。
  しかし、雄は雌とその巣の全体を自分のテリトリーとし、外
敵から家族を守らなければならない。
  野鳥の世界に週休2日制はないから、人間以上に野鳥の
お父さんは、働き詰めで苦労も多いのである。