「マガン北海道越冬7シーズン目記録」
 【越冬期間/平成13年(2001)11月29日〜平成14年(2002)2月22日 
 
  2002.02.10 国内では過去に2度の確認例しかない珍鳥 “ヒメシジュウカラガン”が越冬

 
  2002.02.11 7シーズン目にして初めて越冬数が100羽を超え、過去最大の122羽が越冬。冬空にマガン群影が眩しい

 
  2002.01.20  この日は珍しく降雪、雪面に腰を落とし雪を掻き分け主食である牧草の新芽を探す

 
  2002.02.11 記録的な暖冬で、マガンたちの採食活動は最高の条件下に。今シーズンも地球温暖化現象の影響が


*はじめに
  マガンが北海道で越冬を開始してから7シーズン目となるが、今シーズンは昨年越冬数の二倍
 以上となる122羽が越冬、静内町でのマガン越冬数が7シーズンで初めて100羽を越えた。
  例年、希少種ガンが越冬することも嬉しいが、これまで年数を重ねても越冬数が中々、増えて
 いかなかった状況の中で、越冬数増加は何よりも嬉しい事象となった。
   これに連動するように胆振支庁管内・鵡川町水田でも10羽(成鳥3羽、幼鳥7羽)が初めて越
 冬した。今後、静内町での越冬組が、今まで以上に鵡川町とは越冬行動範囲の地域的な結びつ
 きが強まってくることが予想されるが、2月6日以降、静内町での越冬群れが60km離れた鵡川
 町との往来が活発に確認された。
  この行動は例年であれば2月中旬か3月に入ってからのものであり、温暖であった今冬、気温
 が上昇する等環境変化に敏感なマガンがいち早く察知し、これに呼応するかのようにマガン行
 動が例年より約2〜3週間早く、鵡川町へと移動する前に見せる様々なパフォーマンスとなって
 現れ、年々、静内町・鵡川町間を往来するケースが繁盛になっており、今後も活発化すると思わ
 れる。
 以下、今シーズンの特徴的な事項を何点か記載する。
 その一つは、静内町への群れ渡来は昨シーズンまで一つの塊となって群れが移動してきたが、
 今シーズンは12月5日〜50羽、12月6日〜75羽、12月8日〜89羽、12月9日〜122羽と越
 冬開始時期に幾つかの群れに分かれて静内町へと移動してきたことで、数日間にわたり数十羽
 に分かれ移動して来た。
   直前の移動元は苫小牧市にあるウトナイ湖で、ここでの個体数減がそのまま静内町での個体
 数増と連動していることからも結論づけられ、この傾向はここ数年、顕著であり定着したといって
 よい。
  二点目は越冬終了期日の固定化で、1995年以降の静内町でのマガン越冬期間を精査すると、
 複数群れが越冬したシーズンが多いため、全ての群れという表記にはならないが、主たる群れの
 越冬終了期間が2月22日前後に集中しており、7シーズン中、今シーズンを含めて2月22日で
 終了したのが3シーズン。2月23日が1シーズン、2月25日も1シーズンとなっており、5シーズン
 が2月22日の前後3日間に集中していることから、マガン越冬パターンも固定化の傾向にあるこ
 とが伺われる。
   また、越冬開始期日については、5シーズン目までは12月25日前後であったが、昨シーズン
 が12月13日、今シーズンは11月29日と、ここ2シーズンは越冬開始日が年々と早まっており、
 来シーズンの渡来日が注目される。
   三点目は、国内での確認されることが僅か数例というヒメシジュウカラガンが北海道で初越冬し、
 貴重な越冬例となったことも嬉しいことの一つとなったことである。
   ヒメシジュウカラガンは、アラスカ沿岸部で繁殖、アメリカ西海岸で越冬するが、個体数が世界
 で27万3千羽(2000〜2001年度)しかおらず、8種類いるカナダガン(シジュウカラガン)の中で最
 も体が小さく、ガンの種類の中では個体数も少ない方に属し、日本には極まれにしか渡来しない。
  記録としては1979年10月〜1980年3月、宮城県伊豆沼で国内では初めて1羽が越冬。5〜
 6年前、新潟県、信濃川流域である大河津分水(分水町・寺泊町)で1羽を確認、昨シーズンの2
 000〜2001年度、10月14日〜11月12日間、宮城県伊豆沼周辺で1羽が確認されているなど
 に留まり、データとして存在するのはごく僅かに過ぎない。

*越冬数・期間
 ●越冬総数
   ○126羽  平成13年11月29日〜平成14年2月22日(87日間)*
 ●群数?羽
   平成13年11月29日(多数の群れ鳴き声を確認)
 ●群数50羽(マガン50羽)
   平成13年12月 2日〜平成13年12月 5日【4日間】
 ●群数75羽(マガン74羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
   平成13年12月 6日〜平成13年12月 7日【2日間】
 ●群数89羽(マガン88羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
   平成13年12月 8日〜平成13年12月 8日【1日間】
 ●群数122羽(マガン121羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
   平成13年12月 9日〜平成14年 2月 6日【60日間】
 ●群数 不明
   平成14年 2月 7日〜平成14年 2月 9日【 3日間】
 ●群数126羽(マガン125羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
   平成14年2月 10日〜平成14年 2月22日【13日間】

 ●過去の越冬期間等(主群〜群れ本隊)
  ○1シーズン目/平成7年12月22日〜平成8年3月24日(93日間)
    42羽(マガン41羽、ヒシクイ1羽)
  ○2シーズン目/平成8年12月29日〜平成9年2月23日(57日間)
    28羽(マガン28羽)
  ○3シーズン目/平成10年1月6日〜平成10年2月22日(48日間)
    34羽(マガン33羽、シジュウカラガン1羽)
  ○4シーズン目/平成10年12月28日〜平成11年2月25日(60日間)
    48羽(マガン47羽、ヒシクイ1羽)
  ○5シーズン目/平成11年12月21日〜平成12年3月22日(93日間)
    68羽(マガン63羽、シジュウカラガン4羽、ハクガン1羽)
  ○6シーズン目/平成12年12月13日〜平成13年2月22日(55日間)
    54羽(マガン52羽、ヒシクイ1羽、ハクガン1羽)
  ○7シーズン目/平成13年11月29日〜平成14年2月22日(87日間)
    126羽(マガン125羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
    ※平均値/越冬群数〜57羽、越冬期間日〜70日 

*群別特徴
   静内町への渡来は、幾つかの群れに分かれて移動してきたが、静
  内町での行動は大きく分けて二つの群れで行動することがあったが、
  基本的には122羽が統一しての行動となった。

*ヒメシジュウカラガン
 ●生態〜B.c. minima Cackling 
   1.カナダガンの中で最も小さく、マガモの1.5倍程度の大きさ。
   2.比較的羽ばたきは早い。
   3.甲高い声でキャク、キャクと鳴く。
   4.胸は暗褐色か赤褐色であるが、しばしば紫色味を帯びる。
   5.嘴は短くて太く、その長さは普通32mmを超えることはない。
   6.首の付け根に白い輪が現れることもあるが、あっても非常に細かい不完全であることが多い。
   7.嘴から前傾部にかけての形と頭部は全体的に丸みを帯びている。
   8.左右の頬の白斑はしばしば顎の下でつながっているが、黒い羽毛で分断されていることの
     方が多い。
   9.カリフォルニアでは、黄色い首環が付いていることがある。ただし、マガンにも同様の首環が
     ついていることがある。
   ※参考〜シジュウカラガン(L64cm、W109cm)

*ねぐら
   今シーズンも全てが静内川の中州を使用したが、予想に反し群れ全てが同一行動、同一場所で
  あった。
  ●122羽(マガン121羽・ヒメシジュウカラガン1羽)〜静内川中州

*採食地
   昨シーズンまで利用していたA牧場が、事情により12月までの採食地となってしまった。このた
  め、マガンたちは新たな採食地を探さなければならず、町内の郊外を転々と移動し採食した。その
  結果、A地区をベースにB地区との間を往来することとなった。
   このことは、非常に残念な結果であるが、同時に静内町という地域でマガンが越冬するとことの
  難しさを改めて認識ししたもので、今後の大きな、課題を残す結果ともなった。
 ●平成13年11月29日〜平成13年12月16日〜A牧場
 ●平成13年12月17日〜平成13年12月29日〜不明であるがA牧場とB牧場との往来だったと推
                                 測される。
 ●平成14年12月30日〜平成14年 1月15日〜新採食地A
 ●平成14年 1月16日〜平成14年 1月27日〜新採食地A、新採食他B
 ●平成14年 1月28日〜平成14年  月  日〜新採食他B
 ●平成14年 2月13日〜平成14年 2月12日〜新採食地A、新採食地C
 ●平成14年 2月13日〜平成14年 2月22日〜新採食地C地区全域で往来


*採食行動
   どのような意味合いがあるのかは知らないが、静内町でのこれまで採食行動を分析してみると、
 採食する場所はなぜか人里に限られ、結局、人里の牧草地という設定になる。人里となれば当然、
 身に迫る危険度も高く、人間、飼い犬、車両など多くの危険となるファクターも多いはずである。
   しかし、静内町ではこれまでに全く人影がいない地域での採食活動をみたことはなく、その方が
 はるかに安全な越冬活動が可能と思われるのにそのような行動に出ないのはなぜなのだろうか。
 【今シーズンの特徴】
   ○昨年の群れよりは落ち着きがある。人が近づいてもあまり警戒心はない。
   ○物音、特に金属音には敏感に反応する。

*主な群の行動調
 <2001>
 ○11月29日〜群れの鳴き声を確認、今シーズン群れを初確認。採食地はA牧場
 ○12月 2日〜群数50羽(マガン50羽)
 ○12月 6日〜群数75羽(マガン74羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
 ○12月 8日〜群数89羽(マガン88羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
 ○12月 9日〜群数122羽(マガン121羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
 ○12月25日〜鵡川町でマガン群れ10羽を確認。
 ○12月30日〜採食地が新採食地Aに移動したことが確認される。
 <2002>
 ○ 1月 8日〜新採食地Cから群れの姿が消える。
 ○ 1月16日・17日・18日〜群れが新採食地Cからいなくなる。
 ○ 2月 6日〜静内町で越冬した群れが鵡川町に移動したのが確認される(午前〜静内町、午
           後〜鵡川町)。この頃より静内町〜鵡川町間の往来が活発化する。
 ○ 2月 8日〜鵡川町から静内町へと移動した群れが確認される。(確認時間14:50)
 ○ 2月10日〜越冬した群数が4羽増え、122羽から126羽となる。
 ○ 2月11日〜静内町で越冬した群れが鵡川町に移動したのが確認される。(午前〜鵡川町、
           午後〜静内町)
 ○ 2月11日〜群れ家族間で盛んにブブッ、ブブッとの鳴き返しが聞こえるようになる。
 ○ 2月13日〜この日より、採食場所が新採食地C地区内に固定され、同地区内を往来し移動。
            (少なくても17日まで)
 ○ 2月20日〜鵡川町で約5,000羽のマガン群を確認。既に北帰行が始まっている。今シーズ
           ンは暖冬が原因で、いつもより早い。
 ○ 2月22日〜午前10時まで静内町で確認するが、午後2時には鵡川町で静内町越冬群れを
           確認。この日で今シーズンの町内での越冬終了。
             

            この7シーズン以降は、マガン越冬中の全観察記録を公開しています。