6話〜オオワシ

オジロワシと合わせ 約30羽が
生息


●区分/冬鳥(10〜2月)●場所/静内川周辺
 全長1m、翼を広げると2.50mにもなる大型の海ワシ。
  繁殖地は、カムチャツカ半島など旧ソ連。冬になると越冬のため日
本に渡ってくる冬鳥。黄色の大きなくちばしと真っ白で長めのくさび
形の尾。黒っぽい体と翼上部の純白の鮮やかな羽のコントラスト。
  孤高の気高き姿は、さすが猛禽類の貫禄。周囲を圧倒する迫力
がある。オジロワシとは共通点も多い。国指定天然記念物、主食は
魚類、生息地は海岸、河口、湖沼。
  静内町内での生息地もオジロワシと同じ、静内川と真歌地区。
そして、もう一つのキーワードは「日本絶滅危機動物」。とくにこの
オオワシは、世界に4,000 羽しかいないといわれる。
  開発というより乱開発による森林の伐採。河川、海岸改修。河口
付近の水質汚染など、枚挙にいとまがないほどの人間優先の愚行
の数々。
  しかし、うれしいことにオジロワシ同様、昨年から静内川周辺への
渡来数が飛躍的に増えた。せっかく静内に来ていただいたのだか
ら、せめて河川改修などをできるだけひかえ、居心地を良くしてあ
げようと思うのは、かなわぬ夢なのだろうか。


第7話〜オナガガモ

 あの『矢カモ』の種類 日本で一番多く渡来



●区分/冬鳥(10〜2月)●場所/静内川
  だれの仕業か、背中を矢で射られたまま飛び回り、日本中が大騒
動となったあの「矢ガモ」が、オナガガモの雌であることはあまり知
られていない。
 東京・上野公園内の不忍池で上野動物園職員らによってようやく
保護され、日本中が胸をなで下ろしたのは記憶に新しいところであ
る。
  オスはお尻の尾が、ぴんと立ち、チョコレート色の頭に首から胴に
かけての真っ白いエレガントなカモ。
  名前の由来は、その名のとおり尾が長いから“尾長鴨“。湖、池、
河川、干潟港湾などに渡来し越冬する。近年、いちじるしく生息数
が増える傾向にあり、とくにハクチョウの人為的な給餌地では増加
が目立ち、他のカモがよりつかなくなっている。
  数年前に行われた日本野鳥の会によるガン・カモ類生態調査で
は、国内で一番数が多いカモがこのオナガガモであった。
  静内でも、4〜5年前までは数羽程度であったが、ここ数年、案
の定、増え出した。いつも、10羽位の集団で生活し、体も大きく、
ひときわ長い尾がポイントなので、他のカモとは識別しやい。


第8話〜コガモ

 冬一番渡りカモ ハクチョウの子と勘違い


●区分/冬鳥(10〜2月)●場所/静内川
  例年であれば、「いるわ、いるわ」で数百羽の大群が静内川で越冬
し、静内川で最も数が多い冬鳥のカモ。また、冬鳥の仲間では、例年、
一番始めに静内川に渡ってくる。
  しかし、今年は、どういう訳かコガモを含め、カモ類の姿があまり見
られない。原因は、はっきりしないが、ここ7〜8年間にはなかった事
である。
  雄は頭部が栗色、生殖羽は青緑色の光沢のある中央帯があり、
背は黒色をおびた灰色。腹は細く黒い横縞がある。体が38pと小柄
なので、分かりずらいが、双眼鏡などでよく見ると、実にきれいな色
をしたカモである。 
  しかし、雌は、全体が黒褐色で、他のカモ同様つつましやかな羽色。
静内川では、ハクチョウの側にいることが多いせいか、なぜか、ハク
チョウの幼鳥と勘違いされることが多い。そんな会話を白鳥広場で聞
く度に、思わず笑ってしまう。
  識別のポイントは、一番小さなカモを探すという方法がいい。主に植
物食で、水草、穀物などを食べるが、水生の小動物もよく食べる。
  淡水を好み、海に出ることはあまりない。
 

第9回〜マガモ

 美しさ故に雑誌のモデルに


●区分/冬鳥(10〜2月)●場所/静内川
  よく野鳥を語るとき、例として、カモが引き合いに出される場合が
多い。そして、一般的にカモというと、このマガモがモデルになる場
合が多い。
  例えば、木製のカモのデコイ(本物そっくりに木で作った野鳥)。
或いは雑誌などのカモの絵など、その多くはマガモである。
  アヒルにしても、マガモを原種として中国とエジプトで飼育改良し
たものだし、食用のアイガモや北京ダッグにしてもしかりである。
雌は、地味な褐色の細かい模様をしている。
  雄は、頭が緑色、くちばしは黄色、胸が紫褐色をしているなど、美
しい羽根であり、なるほどこれだけのプロポーションであれば、モデ
ルになるのも理解できるというもの。
  冬鳥となっているが、静内川では少数がそのまま残り繁殖、その
数も年々増加している。
  しかし今年は、どういう訳か、マガモ、コガモ、オナガガモといっも
のカモの常連たちがさっぱり見えず、一体なにが原因かと考え込む
ばかりである。狩猟鳥となっているため、写真を撮ろうとしても、人
の気配を感ずるとすぐ飛び立ってしまうのは、野鳥愛好家として辛
いものがある。 


第10話〜キレンジャク

 日本渡来気まぐれ シベリアの紳士




●区分/冬鳥(10〜3月)●場所/町内全般
  堂々たるかっぷくに頭の上の冠羽と尾の先の鮮やかな黄色。顔
には、覆面をしたプロレスラーごとく黒のライン。なんとなく“蝶ネク
タイの紳士”のイメージがぴったりの野鳥。
  大きさはツグミよりもやや小さく、全長約20p。冬になるとシベリ
ア大陸から群れとなり渡来するが、その数は、年により大きく異な
る。理由は、繁殖地であるシベリアや渡りの通過地での木の実の
なり方の多い、少ないに関係するからで、日本にやってくる数も不
定期、不定数。
  探して、簡単に見ることができる野鳥ではないから、その姿を見
ることができれば、ラッキー以外にない。山地の落葉広葉樹林で
生息することが多いが、市街地や集落地にも現れる。
  静内では、真っ赤に垂れ下がった街路樹のナナカマドやイボタ
の木に何十羽となって飛び回る光景をよく目にする。
  キレンジャクは、鈴鳴りになっている様子から「黄連雀」の名が
ついた。良く似た野鳥で尾羽の先が赤いヒレンジャクがいるが、残
念ながら、私はいまだにお目にかかった事はない。