第11話〜ツグミ

 受難の渡り鳥 焼き鳥を連想


●区分/冬鳥(10〜4月)●場所/町内全般
  均整のとれたスマートな形をし、森林、農耕地、河川、公園の
他、庭先のバードテーブルにも姿を現す代表的な冬鳥。静内町
内でも、地上で両足をそろえ、ホッピングしては立ち止まる、特
徴のある動作を、静内川河畔や森でよく見かける。
  残念ながらツグミといえば、すぐ連想するのが焼き鳥。(ただ
し、私が食べたとか、食べたいとかということでない)
  福井県では、昭和42年に県の鳥をツグミに指定した。それ以
前は、美しい特別天然記念物のコウノトリが、県鳥であった。し
かし、絶滅したため、県で公募することになり、その結果、応募
数の43%を獲得したツグミが選ばれた。密猟全盛期であったこ
の時代に、一番の被害者であったツグミが選ばれたのは、大き
な意義があった。
  とくに中部地方では、捕獲が禁止されているツグミが、霞網
を使って大量に密猟され、半ば公然と料理店などに焼き鳥とし
て出回っていたからである。
  渡り鳥の受難は、これからも続くであろうが、この受難が過去
のものとなったときこそ、日本が本当の“文化国家”を誇れるの
ではないかと思う。
  

第12話〜ユリカモメ
 
『都鳥」など多彩なキャラクター


●区分/旅鳥(9〜5月)●場所/静内川
  はっきり言って、このカモメは面白い。なぜか、それは、この鳥
が、幾つもの魅力あふれるキャラクターを持っているからである。
○その1〜空中キャッチ
  毎日、数多くの人が静内川のハクチョウに餌をあげにやって来
るが、自由自在に飛び回り、投げたパンを、さっと横取りするカモ
メがこのユリカモメ。
  餌を空中でキャッチするその早業は、あっけにとられてしまうが、
よく見ていると、ホバーリング(空中停止)するなど、いかに頭脳
的なプレーかが分かる。
○その2〜様々な採餌法
 ・アジサシ類のようにダイビングして魚を捕らえる。
 ・半開きにしたくちばしを水面につけ、飛びながら前進して魚を
  追う。
 ・水草や泥の中で足踏みして、小動物を追い出す。
○その3〜都鳥
 “都鳥”と呼ばれ、古来から詩歌で、多くの歌人に愛されてきた。
平安前期、日本最古の歌物語「伊勢物語」の中でも登場する。
○その4〜頭巾
 夏羽になると頭部が、あたかも頭巾をかぶったかのように黒色
に変わる。こんなに魅力にあふれた野鳥は、そう多くはいない。
実に愛すべき器用さと、頭の良さである。


第13話〜ハシビロガモ

 餌だけを採取の水上ショベラー


●区分/冬鳥(10〜3月)●場所/静内川
  数多くのカモの中でも、特異なキャラクターを持つのがハシ
ビロガモ。小さな頭に、不釣り合いなほど大きなくちばしの淡
水ガモ。
  しかし、これには理由がある。つまり、大切な餌を捕るには、
この大きなくちばしが欠かせないのである。くちばしを水面に
つけ、そのまま水面に円を描くようにして泳ぎ、上下のくちばし
の合わせ目についているたくさんの薄板で、水を次々とろ過
する。
  ハシビロガモを英名でショベラーというが、なるほど、特徴を
ストレートに言い当てていて面白い。この方法で、水中のプラ
ンクトンや小さな草の実など、餌(有機物)になるものだけを採
取して食べる。
  静内川では、いつでも見ることはできないが、例年、1、2度
は河口付近に可愛い姿を見せてくれる。雄は、頭部が光沢の
ある。緑黒色、背面は黒褐色、胸は白色、腹部は栗色などの
羽がきれい。金色の目とともによく目立ち、野外でもすぐ分かる。
  越冬地では、湖沼、池、河川などで生活し、まれに海上で
見られることもある。野鳥にも、様々なキャラクターがあるから、
バードウォッチングは楽しい。  


第14話〜ノスリ

 優しい黒目で だるま型の猛鳥


●区分/留鳥(通年)  ●場所/町内全般
  トビより少し体が小さく、白っぽく見える。尾が短く、カラスほど
の大きさで、だるまさんのようにずんぐりしている。猛禽類の中
では珍しく、やさしい黒目をしている。
  全長55p、翼を広げると約130 p。頭部は淡褐色で顔には
ひげ状の褐色の班がある。普段は高山で生活するので、あま
り姿は見ないが、冬になると平地に下る。日高沿線の海岸で、
電柱に止まり、物を探しているのをよく見かける。
  トビによく似ており、トビのように上空をゆうゆうと旋回してい
ることが多い。 ピューイ、ピューイと、周囲に響く大きいな鋭い
声で鳴き、荒れ地、河原、耕地、干拓地などの開けたところで
餌を捕る。
  餌はネズミなどの小型哺乳類、カエル、ヘビ、昆虫のほか、
キジバト、カモ、ツグミなどの鳥。
 上昇気流に乗り、低空飛翔を繰り返しながら高度を下げてい
き、急降下して地上の獲物を捕らえたりする。 低山帯から標
高2,000mくらいの高山の山林に営巣、繁殖する。
  5〜7月にかけて巣を作り2〜3個を産卵。抱卵日数は約30
日、ひなは40日前後で巣立つ。

 
第15話〜シノリガモ

 派手派手コスチュームのカモ


●区分/冬鳥(10〜3月)●場所/春立海岸、静内川 
  全身をまるでお人形さんのように着飾った可愛い小型の海ガ
モ。
  雄は、こんなにハデ目のコスチューム(羽)をまとって良いも
のだろうか、という位、青、白、オレンジ、黒色などの羽の色彩
は美しく、品がある。雌は黒褐色で下面やや淡く、顔に3つの
白色の丸い班がある。
  全長約43p。体は丸っこく、首は短い。海面で長目の尾を上
げていることが多い。小群で、波の荒い海岸で生活し、岩礁の
ある所を好む。
  静内では、春立海岸の小さな岩場がある所で、いつも小さな
群れをつくっている姿をよく見る。岩場に上がっては休息し、浅
い海に潜っては餌を捕る。 動物質の餌が好物で、カニ、エビ、
ウニ、貝類、小魚、甲殻類などを良く食べる。
  繁殖地のシベリア東部には、4月下旬〜5月に帰る。しかし、
生息地が海でなく、山間部の渓流や速い水流に沿った草むら
であるというのが面白い。
  岩陰、水流中の小島などに営巣し、つがいでなわばりを持
つ。急流などを巧みに泳ぎ、トビゲラの幼虫などの水生昆虫を
捕らえる。