マガン静内初渡来  




 全てはここから始まった
 1995年2月 静内に初めてマガン
 
 1995(平成7年)年2月12日、この年のマガン北帰行第一団とみられる群れ28羽が
何の前触れもなく、突然、静内町神森地区に渡来し、2月12日〜3月9日までの約一ヶ
月間、寄留(生息)した。
  この時点では、一過性の事象とも考えられ大して注目もしなかったが、その年の12月
22日、マガン41羽、ヒシクイ1羽の計42羽の群れとなり渡来し、そのまま翌年3月24日
までの93日間、北海道で初めて越冬し、全国的ニュースとなった。
  しかし、その後、町内の長老等による聞き取り調査で、越冬はしないにしても春季及び
秋季には静内町内に渡りの途中(特に春には)、かなりの群れ数が町内・御園地区、田原
地区などの牧草地に立ち寄ったり、海上を幾つもの群れが北上していたことなとが分かり、
静内町は昔から渡りルート上の一部であったことが判明した。
  この年の春は、まだ事の重要性も認識しておらず、本腰を入れての観察体制もまだ整っ
ていなかったため、観察も断片的なものではあるが、記録は次のとおりである。
  なお、初確認日が2月12日となつているが、マガン群れを確認したのはこの日が最初
ではあるが、この日に確認した糞や足跡などの状態から判断すると少なくても10日前には
静内に到着していたと考えられ、2月1日頃には既に静内への移動が終了していたものと
考えられる。


【観察記録】
●平成7年2月12日(日)、15時。
 ○場所〜神森の水田、牧草地
 ○数 〜28羽
 ○様子〜・数日前から渡来しているようで、足跡、糞等がかなりあった。
       ・発見したのは2月12日午後で、盛んに餌となる雪解け後の草を食べていた。
       ・夕日に向かって、ビッ、ビッという羽根のきしむ音を残しながら、新冠方向へ
        飛んで行った。
       ・ウトナイ湖サンクチュアリに確認しても、まだ、渡りの大きな動きはない。
        また、鵡川付近まででは、確認されているが、静内での確認は珍しいとの
        こと。
       ・糞が前日のもと思われる、糞が有り、少なくても11日には、ここにいたと思
        われる。

●2月25日(土)、9時30分。
 ○場所〜神森
 ○様子〜全体が、眠たいのか、ほとんど羽を休め、寝ている状態。

●2月25日(土)、17時10分。
 ○様子〜辺りを見回すが、見当たらず。(直ぐ近くに、いたと思われる)

●2月26日(日)、16時40分〜17時40分。(日没・17時50分)
 ○場所〜神森
 ○数 〜27羽
 ○様子〜・ねぐらを確認しようと、清水丘の中腹に上がり観察する。ねぐらは海上ではな
        いかという予想に反し、同じ神森地区の服部牧場の下で羽を休める。
       ・17時20分、一斉に飛び立つが、周辺上空を周回して、わずか、数百mの地点
        に降りる。
       ・ねぐらと思える地点は、雪がほとんどで、僅かに雪解けした水溜まりが見られ
        る。丁度、若干、盆地状になっており、辺りからは、ロケーションも死角となっ
        ており、風の影響も少ないと思われ、市街地近郊といえども、ねぐらには絶交
        の場所と思われる。数羽が辺りを見わたしており、警戒をして様子が分かる。
        午後5時50分、日没で観察中止。

●3月4日(土)、一日中(17時50分まで)
 ○場所〜神森
 ○数 〜27羽
 ○様子〜・今日は風は冷たいが、抜けるような良い天気。午前中は、今日も寝たきり状態
        のマガン。午前中はいつも動きが静かであるようだ。今日はしっくりと付き合っ
        たが、渡りが近いためのトレーニングの性か、盛んに飛び回っているのが特徴
        で、同じ所にじっとはしておらず、一日中、飛び回っているようだ。いつもの所に
        20分はおらず。神森では、服部牧場裏の牧草地。後は判明しないが、双眼鏡
        での観察範囲では、中野地区の他、静内川、市街地方向等、動き回っている。
        ・ベースキャンプとなっているのは、神森地区。今日は、都合で午後5時45分ま
        での観察となったが、服部牧場裏でしつこく、草を食べていた。清水丘に上がり、
        各地を確認したが、神森地区の服部牧場にいるのを確認。
        ・その後、7時頃、服部牧場と以前のねぐらで姿を追ったが、確認するこ とはでき
        ず、残念。以前の確認地は、今日、トラクターが肥料を撒いていた。匂いもあり、
        恐らくここにはいられなくなったであろうと感じたが、やはりその様であった。
       ・それにしても、鍵になり竿になりといった、編隊飛行は、一糸乱れず、見事なも
        のである。だれが、号令をとり、指示をどの様に出して、どの様にそれぞれが確
        認しているというのか。不思議である。
       ・一体、どこにねぐらを設けているのか、全く分からない。

●3月5日(日)、17時00分〜17時50分。(日没:18時00分)
 ○場所〜神森
 ○数 〜27羽
 ○様子〜・今日は、午後5時からの観察。渡りが近い性か日没直前まで、いつもの場所で
        雪解け状態の草をもくもくと食べている。怪しげな音にはすぐ反応し、首をすぐ上
        げるしぐさは変わらず。
       ・しかし、車のエンジン音にはピクともせず。この事は、越冬地の伊豆沼等の環
        境がいかに市街地に近いという証しでもある。
       ・午後5時43分、東の方向(静内川)に向かい、一斉に飛び立つ。神森から静内
        川方向に向かい飛び立つも、日没近い条件のため、飛びって暫くして一群を暗
        さのため、見失う。実に残念である。
       ・今日も、ねぐらを確認することが出来ずにくやしい約一か月の間、静内にいてく
        れたのは今回が初めて。まだ、渡りまでは、日があるばず、もう少しの期間は
        滞在するはずである。

●3月9日(木)、12時15分、
 ○場所〜神森
 ○数 〜27羽

●3月10日(金)、12時20分、
 ○場所〜神森地区では確認できず。
 ○数 〜0羽
 ※この日、以降にマガンを確認できず。






越冬5シーズン概要(1995年12月〜2000年3月) 

  従来、北海道は秋・春の渡りの中継地としてガンが渡来していましたが、地球温暖化に
起因し、1995年から静内でマガンを中心とするガン類が越冬するようになりました。
  数こそ数十羽程度でさほど多くはありませんが、僅か5シーズンにマガン、ヒシクイ、シ
ジュゥカラガン、ハクガン、コクガンと日本に渡来する8種類の内5種類が渡来し、この内マ
ガン、ヒシクイの外、国内で数羽しか確認されないシジュウカラガン及びハクガンの計4種
類が越冬、シジュウカラガンについては1997年度と1999年度の2シーズンにわたり越
冬するなど、越冬数に比較し種類が豊富であることが静内の特徴です。

   渡来したガン 越冬したガン      越  冬  期  間 ( 数 ・ 種 類 )
 1995年
   〜
 1996年
  
 
  7
0羽
●コクガン1羽
  (A・J不明)
●マガン68羽
  (A・J不明)
●ヒシクイ1羽
  (J1羽)
   42羽
●マガン41羽
  (A・J不明)
●ヒシクイ1羽
  (J1羽)

●1995年12月22日〜1996年3月24日(93日間)
   42羽(マガン41羽・ヒシクイ1羽)
 ○1995年12月22日〜1996年3月9日
   42羽(マガン41羽、ヒシクイ1羽)
 ○1996年3月10日〜1996年3月22日
   36羽(マガン35羽、ヒシクイ1羽)
 ○1996年3月23日〜1996年3月24日
   30羽(マガン29羽、ヒシ
クイ1羽) 
 
 1996年
   〜
 1997年
  
   30羽
●マガン30羽
   (A20羽・
   J10羽

  
   30羽
 ●マガン30羽
   (A20羽・
   J10羽

 

●1996年12月29日〜1997年4月25日(118日間)
   30羽(マガン成鳥20羽・幼鳥10羽)
 ○1996年12月29日〜1997年2月23日、
   3月16日(23日間)
   28羽(成鳥20羽・幼鳥8羽)
 ○1997年1月15日〜1997年4月25日(101日間) 
   2羽(幼鳥)
   *28羽と2羽は、2月22日以外は別行動

 1997年
   〜
 1998年

 
    
  34羽 
●マガン33羽
  (A・J不明)
●シジュウカ
  ラガン1羽
  (標識鳥:
   069)

 
 
   
   34羽 
●マガン33羽
  (A・J不明)
●シジュウカ
  ラガン1羽
  (標識鳥:
   069)
 

●1998年1月6日〜1998年3月24日(78日間)
   34羽(マガン成鳥・幼鳥識別不明、シジュ
    ウカラガン1羽)
 ○1998年1月6日〜1998年2月22日(48日間)
   33羽(マガン成鳥・幼鳥識別不明)
 ○1998年1月6日〜1998 3月24
(78日間)
   1羽(シジュウカラガン)
 
 1998年
   〜
 1999年
  
 
  48羽
●マガン47羽
  (A28羽・
    J19羽)
●ヒシクイ1羽
  (J1羽)

  
   48羽
●マガン47羽
  (A28羽・
   J19羽)
●ヒシクイ1羽
  (J1羽)
●1998年11月30日〜1999年3月22日(113日間)
   48羽(マガン成鳥28羽・幼鳥19羽、ヒシクイ
       幼鳥1羽)
 @1998年12月28日〜1999年2月25日 (60日間)
   46羽(マガン成鳥28羽・幼鳥18羽)
 A1998年11月30日〜1999年3月22日
   (113日間)
   ヒシクイ幼鳥1羽
 B1999年1月1日〜1999年2月24日(55日間)   
    マガン幼鳥1羽
  (@とABは別行動、ABは前半は同一で後
   半は別行動)
  *越冬数〜48羽(@+A+B)
   @種   類/マガン〜47羽、ヒシクイ〜1羽
   A成鳥・幼鳥/成鳥〜28羽、幼鳥〜20羽
 1999年
   〜
 2000年
  

 
   69羽
●マガン64羽
  (A31羽・
   J33羽)
●シジュウカ
  ラガン4羽
  (A・J不明)
●ハクガン1羽
 (A・J不明

 
   68羽
●マガン63羽
  (A31羽・
  J32羽)
●シジュウカ
  ラガン4羽
  (A・J不明)
●ハクガン1羽
 (A・J不明)

 
●1999年12月21日〜2000年3月22日(93日間)
   68羽(マガン幼鳥32羽・成鳥31羽、シジュウ
   カラガン1羽、ハクガン1羽)
 ○1999年12月21日〜2000年3月22日(93日間)
   マガン63羽(成鳥31羽・幼鳥32羽)    
 ○1999年12月21日〜2000年3月22日(93日間)
   シジュウカラガン4羽    
 ○1999年12月21日〜2000年3月22日(93日間)
   ハクガン幼鳥1羽
  *越冬数〜マガン63羽(幼鳥32羽・成鳥31羽)
         シジュウカラガン4羽
         ハクガン1羽(幼鳥1羽.オオハク
         ガンと思われる)
         合計68羽