●はじめに
静内町での越冬は、5シーズン目を数えるが今シーズンほど特徴的な年はなく、68羽の雁た
ちが93日間にわたり越冬、過去最高であった昨シーズンの46羽を22羽も上回り、なおかつ連続
して5シーズンを経過、越冬地として定着し「日本最北の越冬地」を確立出来た。
また、この年は3種類のガンが越冬し、これまでに越冬したマガン、ヒシクイ、シジュウカラガン
に加え、国内で5羽程度しか越冬しないハクガン(ハクガンかオオハクガンは不明)1羽が、静内
で4羽のシジュゥカラガンと共に初めて越冬した。
●越冬期間・越冬数
【日高支庁管内/静内町】
*平成11年12月21日〜平成12年3月22日
○マガン63羽(幼鳥32羽・成鳥31羽)
○シジュウカラガン4羽(幼・成鳥は不明)
○ハクガン1羽(幼鳥1羽.オオハクガンと思われる)
○合 計 68羽(標識鳥なし)
*種 別(5タイプ)
@マガン63羽(成鳥31羽・幼鳥32羽、A牧場)
平成11年12月21日〜平成12年3月22日(93日間)
Aシジュウカラガン4羽(A牧場)
平成11年12月21日〜平成12年3月22日(93日間)
Bハクガン幼鳥1羽(A牧場)
平成11年12月21日〜平成12年3月22日(93日間)
*なお、この群れとは別にマガン幼鳥が生息した。
Cマガン幼鳥1羽(静内町田原・田原沼)
平成11年10月23日〜平成11年11月1日(10日間)
【日高支庁管内/様似町・浦河町】
Dマガン幼鳥2羽(120 日間)
・浦河町東幌別・東ライベツ川
平成11年11月15日〜平成11年12月1日(17日間)
・様似町・様似川
平成11年12月2日〜平成12年3月13日(103
日間)
【胆振支庁管内/苫小牧市】
Eヒシクイ3羽(飛翔可能2羽、飛翔不可能1羽)
・ウトナイ湖
平成11年12月〜平成12年2月
(越冬期間は、他の渡りの群れと離脱していた間)
●ねぐら
昨シーズンまで、ねぐらは田原地区にある静内川中流域のみの一か所であったが、今シー
ズンは、初めて従来の場所以外の静内川下流域を何度か使用した。
●採食地
○A牧場(68日間)
平成11年12月21日〜平成12年1月16日(27日間)
平成12年2月11日〜平成12年3月22日(41日間)
○浦和地区/増本牧場・八田牧場(25日間)
平成12年1月17日〜平成12年2月10日(25日間)
●採食状況
今シーズンは、主として町内のA牧場で採食をしたが、このA牧場とは別の浦和地区の牧草
地でも25日間にわたり採食し、従来、次々と採食地を変えていった事象に歯止めがかかり、こ
の2箇所に集中しての採食となった。
これは、採食場所を未公表とし、生息環境を整えた結果、マガンたちが安心して採食行動を
営んだ証しで、私自身も群れに近付くのは月に1〜2回程度とし、遠隔地からの観察を徹底す
ると同時に、写真もほとんど撮らないよう自分に課すなど、徹底した安全管理体制を敷いた。
浦和地区での採食も、たまたま今年は、例年にない積雪が原因で採食が困難となったため
に、仕方なく群れが降雪量の最も少ない浦和地区へ移動した結果であり、降雪量が平年並み
であれば、A牧場からの移動行為は起こり得なかったと思われる。
理由は、A牧場の牧草は牧場のご厚意で秋の刈り入れ時期に刈り取りをせず、冬場にガン
たちが牧草を沢山食べれるよう配慮していただいていることもあり、質・量共に町内では飛び
抜けて優れていること。周辺の越冬環境が極めて良いというなどが挙げられる。
●渡りルート(シジュウカラガン・ハクガン)
平成11年12月21日〜平成12年3月22日まで、シジュウカラガン4羽、ハクガン1羽が静内
町で越冬したが、それ以前に苫小牧市・ウトナイ湖、美唄市・宮島沼、砂川市・袋地沼で確認
されており、それぞれが希少種ゆえに同一個体である可能性が強い。
また、12月21日、静内町に初渡来したマガンたちの群れ数は、個体数を調べるために撮っ
た写真には76羽が写っており、翌22日には越冬数となった68羽に減少していることから、ウト
ナイ湖で越冬した3羽は、12月21日に一旦、静内町へと飛来した76羽の群れの一部と思われ
る。