オオハクチョウの渡り




                         北帰行

   3月、風の強いある日。その日は朝から北西の風が強く吹く日であったが、
  シベリアへと向かう途中、太平洋沿岸静内沖を北上するオオハクチョウフ
  ァミリー群れ12羽を見つけた。

  前へと進もうと懸命に羽ばたいているが、 向かい風をまともに受け、殆ど
  前進できず、高度を下げ海面すれすれを飛んでいたかと思うと、今度は徐
  々に高度を上にとるなど、あえぎ苦しんでいた。
  良く観ると、風の抵抗を受け、最もエネルギーを必要とする隊列の先頭も
  次々と責任を果たしては入れ替わり、見るからに悪戦苦闘状態であった。

  野生動物が厳しい大自然の中で生きていくことは、大変なことである。
  色々な自然との闘いがあり、どんな条件下でもそれを克服しながら飛翔を
  続けなければならない渡り鳥の宿命、生命をかけた行動でもある
  「渡り」とは、大変なリスクと隣りあわせであると改めて感じた。


   私たちの知らない所で、このようなことを繰り返しながら何千キロも移動す
  る野鳥たちの知力、気力、体力、そしてパワーとは凄いといつも思う。
  目の前で懸命に、健気に生きているオオハクチョウの姿を
見ている内に気
  が付くと頑張れと!大声をかけていた。
  それ程、感動的なシーンであり、目頭が熱くなり涙が溢れて止まらなかった。