世界の動植物を保護する目的でIUCN(国際自然保護連合)は、
絶滅の恐れのある動植物の種を選定し、その生息状況などを明ら
かにした資料であるレッドデータブックを作成(1966年初版発行)
しました。
アメリカや英国などの先進諸国では、IUCNのレッドデータブック
を基礎に自国の保護政策を進め、日本でも環境庁によって鳥獣以
外も含めた野生動物全般を対象とした種の保護を進める第一歩と
して、わが国に生育・生息する野生動物の内、絶滅の恐れのある
野生動物の種をリストアップし、それらの分布や生息状況などを明
らかにしたデータ集、日本版レッドデータブックを1991年に発行し
ました。
日本版レッドデータブックは、掲載種を5つのカテゴリーに分けて
おり、これはIUCNのRed
List(1998)に準じた4つのカテゴリー
(絶滅種・絶滅危惧種・危急種・希少種)に地域個体群を加えたも
のであり、カテゴリー定義を分りやすく書き表したものです。
日本版レッドデータブック(カテゴリー・種名)
≪野生動物編≫
『絶滅種』…………過去に日本に生息したことが確認されているが、既に絶滅したと思わ
れる種、または亜種。
●信頼出来る調査や記録によって、絶滅したことが確かめられている。
或いは複数の信頼できる調査でも、生息が確認出来なかった。
●情報の少ないものについては、過去50年くらいの間に、生息の情報
が得られていない。
◎鳥類〜キタタキ、ミヤコショウビン、リュゥキュウカラスバト、オガサワ
ラカラスバト、オガサワラガビチョウ、オガサワラマシコ、ハシ
ブトゴイ、カンムリツクシガモ、マミジロクイナ、ダイトウミソサザ
イ、ダイトウヤマガラ、ダイトウハシナガウグイス、ムコジマメグ
ロ
◎哺乳類〜エゾオオカミ、ニホンオオカミ、ニホンアシカ、ヤキナワオオコ
ウモリ、オガサワラアフセラコウモリ
◎淡水魚類〜クニマス、ミナミトミヨ
◎昆虫類〜カドタメクラチビゴミムシ、コゾノメクラチビゴミムシ
『絶滅危惧種』……絶滅の危機に瀕している種または亜種。
●現在知られている全ての個体群で、個体数が著しく減少している。
●現在知られている全ての生息地で、生息条件が著しく悪化している。
●再生産能力を上回るほど捕獲・採取されている。
●ほとんどの分布域で交雑可能な別種・別亜種が侵入しており、種
としての純粋性が失われつつある。
●過去(30〜50年)に生息の記録があるが、その後、信頼すべき調査
が行われていないため、絶滅したかどうか判断しにくいもの。
◎鳥類〜トキ、コウノトリ、シマフクロウ、オジロワシ、タンチョウ、ウミガ
ラス、エトピリカ、クマタカ、イヌワシ、アホウドリ、チシマウガラス、
オガサワラノスリ、ダイトウノスリ、カンムリワシ、ライチョウ、ヤ
ンバルクイナ、アマミヤシギ、ヨナクニカラスバト、アカガシラカ
ラスバト、キンバト、ノク゜チゲラ、オーストンオオアカゲラ、ミュビ
ケ゛ラ、ヤイロチョウ、オオトラツグミ、ハハジマメグロ、オガサワ
ラカワラヒワ
◎哺乳類〜ニホンカワウソ、イリオモテヤマネコ、ツシマヤマネコ
◎汽水・淡水魚類〜イワメ、キリクチ、サツキマス、リュウキュウアユ、ア
リアケシラウオ、アリアケヒメシラウオ、ヒナモロコ、ウシモツゴ、
イタセンバラ、ニツポンバラタナゴ、スイゲンゼニタナゴ、ミヤコタ
ナゴ、アユモドキ、ネコギギ、ムサシトヨミ、九州産ギバチ
◎両生爬虫類〜ホクリクサンショウウオ、アベサンショウウオ、キクザト
サワヘビ、
◎昆虫類〜シオアメトンボ、イシイムシ、ヒヌマイトトンボ、ベッコウトンボ、
エグリタマミズムシ、イシガキニイニイ、オガサワラハンミョウ、
ケバネメクラチビゴミムシ、ツヅラセメクラチビゴミムシ、ウス
ケメクラチビゴミムシ、リュウノメクラチビゴミムシ、キイロホソ
ゴミムシ、ヤシャゲンゴロウ、シャープゲンコ゜ロウモドキ、リュ
ウノイワヤツヤムネハネカクシ、ヨコミゾドロムシ、ヤンバルテ
ナガコガネ、キイロネクイハムシ、イソメマトイ、ゴイシツバメシ
ジミ、オオウラギンヒョウモン、ミツモンケンモン、ノシメコヤガ
『危急種』…………絶滅の危険が増大している種または亜種。
●大部分の個体群で、個体数が大幅に減っている。
●大部分の生息地で、生息条件が明らかに悪化しつつある。
●大部分の個体群が、その再生産能力を上回るほどの捕獲・採取され
ている。
●分布域のかなりの部分に交雑可能な別種・別亜種が侵入しており、
種としての純粋性が失われつつある。
◎鳥類〜シジュゥカラガン、サカツラガン、オオワシ、クマゲラ、カンムリ
カイツプリ、クロウミツバメ、ツクシガモ、ミサゴ、オオタカ、チュ
ウヒ、ハヤブサ、シマハヤブサ、ナベヅル、マナヅル、オオクイ
ナ、ヘラシギ、シベリアオオハシシギ、カラフトアオアシシギ、
コシャクシギ、カンムリウミスズメ、カラスバト、アカヒゲ、ホント
ウアカヒゲ、ウスアカヒゲ、アカカッコ、オオセッカ、ルリカケス
◎汽水・淡水魚類〜イトウ、ムツゴロウ、ゴギ、ウケクチウグイ、ハリヨ、
ヤマノカミ(6種)
◎哺乳類〜ゼニガタアザラシ、トウキョウトガリネズミ、チョウセンゴジネ
ズミ、ワタセジネズミ、オガサワラオオコウモリ、アマミノクロウ
サギ、アマミトゲネズミ、オキナワトゲネズミ、ケナガネズミ、ツ
シマテン、ケラマジカ(11種)
◎両生爬虫類〜ハクバサンショゥウオ、イシカワガエル、オットンガエル、
ホルストガエル、セマルハコガメ、リュウキュウヤマガメ(6種)
◎昆虫類〜ギフチョウ、ミヤジマトンホ゛、クロイワゼミ、カワムラナベブ
タムシ、タガメ、イカリモンハンミョウ、ヨドシロヘリハンミョウ、マ
ークオサムシ、ホンシュウオオイチモンジシマゲンゴロウ、マダ
ラシマゲンゴロウ、ゴヘイニクバエ、イトウハバチ、ルーミスシジ
ミ、ヒョウモンモドキ、タカネヒカゲ(15種)
『希少種』………存続基盤が脆弱な種または亜種。
●生活環境が変化すれば、容易に絶滅危惧種、危急種に移行するよ
うな要素を持つもの。
○どの生息地でも生息密度が低く希少である。
○生息地が限定されている。
○生物地理上、孤立した分布特性を持つ。
○生活史の一部または全てにわたって、特殊な環境条件を必要とし
ている。
●生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判
断されるもの。分布域の一部での傾向が顕著名もの。或いは今後
更に進行する恐れがあるもの。
○個体数が減少している。
○生息条件が悪化している。
○過去に捕獲・採取されている。
○交雑可能な別亜種が侵入しているもの。
◎鳥類〜マガン、コクガン、ヒシクイ、コハクチョウ、コアホウドリ、セグ
ロミズナギドリ、ヒメクロウミツバメ、クロコシジロウミツバメ、
アオツラカツオドリ、アカアシカツオドリ、サンカノゴイ、オオヨ
シゴイ、スグロミソゴイ、チュウサギ、カシラサギ、ナベコウ、
ヘラサギ、クロツラヘラサギ、クロトキ、アカネシクシガモ、オ
シドリ、トモエガモ、アカハジロ、シノリガモ、コウライアイサ、
ハチクマ、リュウキュウツミ、ハイタカ、オオハヤブサ、シベリ
アハヤフ゛サ、コシジロヤマドリ、クロヅル、カナダヅル、ソデ
クロツ゛ル、アネハヅル、ノガン、シマクイナ、チシマシギ、ア
カアシシギ、ホオロクシギ、シロハラチュウシャクシギ、オオ
ジジギ、セイタカシギ、ツバメチドリ、オオアジサシ、ベニアジ
サシ、エリグロアジサシ、コアジサシ、マダラウミスズメ、ウミ
スズメ、シラコバト、リュウキュウオオコノハズク、キンメフクロ
ウ、ブップウソウ、シロガシラ(ヤエヤマシロガシラ)、モスケミ
ソサザイ、タネコマドリ、ウチヤマシマセンニュウ、イイジマム
シクイ、オリイヤマガラ、ナミエヤマガラ、オーストンヤマガラ、
コジュリン、カササギ(65種)
◎汽水・淡水魚類〜オショロコマなど17種
◎哺乳類〜エゾオコジョ、ラッコなど36種
◎両生爬虫類〜タイマイなど11種
◎昆虫類〜ヒメギフチョウ、カフトイトトンボ、ムカシゲンゴロウなど175
種
『地域個体群』……保護に留意すべき地域個体群〜地域的に孤立している個体群で、絶滅
のおそれが高いもの。
●希少種、または生息状況、学術的な価値などの点から、希少種に準じ
て保護に留意すべきと判断される種の地域個体群で、生息域が孤立
しており、地域レベルでは絶滅に瀕しているか、その危険が増大して
いると判断されるもの。
●地方型としての特徴を有し、生物地理学的観点から見て重要と思われ
る地域個体群で、絶滅に瀕しているか、その危険が増大していると判
断されるもの。
◎哺乳類〜北海道石狩西部のエゾヒグマ、下北半島のニホンザル、東
北地方のニホンザル、琵琶湖以西のニホンリス、紀伊半島
のツキノワグマ、東中国産地のツキノワグマ、西中国産地の
ツキノワグマ、四国山地のツキノワグマ、九州のツキノワグ
マ、青森県のニホンイイズナ、徳之島のリュウキュウイノシシ、
四国のニホンカモシカ、九州のニホンカモシカ、
◎汽水・淡水魚類〜佐賀県六角川のエツ、静岡県のカワバタモロコ、九
州のアカザ(アカバチ、アカギギュウ)、沖縄のメダカ、沖縄の
タウナギ、福島会津のイトヨ、福井県大野盆地のイトヨ
◎両生類〜京都・大阪地域のカスミサンショウウオ、東京都のトウキョウサ
ンショウウオ、愛知県のトウキョウサンショウウオ、高知県のオ
オイタサンショウウオ、本州・九州地域のオオダイガハラサンシ
ョウウオ
◎昆虫類〜宮古島のツマグロゼミ
*新編、現在製作中です。