「静内町マガン越冬11シーズン目記録」
            【越冬期間/平成17年(2005)12月8日〜平成18年 2月18日】 



2006.2.25 日高山脈をバックに飛翔するマガン・ヒシクイ14羽(浦河町富里地区


 2006.2.18 少ない表土を求めて採餌する採餌マガン15羽(新冠町泥火山地区


 2006.1.28 サラブレッドと仲良く採餌するマガン・ヒシクイ14羽(浦河町荻伏地区


 2006.1.22 越冬11シーズン目にして初めて浦河
町荻伏地区でマガン11羽とヒシクイ3羽の群れを確認。写真はその内のマガン幼鳥10羽


 2006.1.22 
半分枯れているが雪の少ない場所を探して採餌するマガン幼鳥(浦河町荻伏町東栄地区)


 
2006.1.11 採食する場所を求め幾つかに分かれて行動するマガン。マガンが越冬開始をし11シーズンになるが、これだけの積雪は初めて


 2006.1.9 まだまだ、根雪が深く採食には苦労が続く


 
2005.12.18 この頃はまだ積雪は直ぐに解けると思われていたが


  
2005.12.18 サラブレッドが掘り返した雪面を更に掘り返しての採食が続く


 地球温暖化に起因し平成7年以降、従来、越冬の北限であった宮城県伊豆沼から一気に400km
も北に位置する北海道新ひだか町静内に国指定天然記念物マガンが越冬するようになったが、以
後、越冬を続け、今シーズンも変則的な越冬となったものの11シーズン連続の越冬を記録した。


 今年の渡来は例年より約一ヵ月早い12月8日、さらに個体数としては過去最高の172羽が渡来
したことから順調に越冬が経過すると予想されていたが、12月10〜11日に降った約20センチの
降雪が根雪となり、採食活動が思うようにいかない状況となって以後、群れの大半が静内町内から
姿を消し、結果的に新冠町高江地区を中心とし一部が越冬、更にはこれとは別の群れが1月下旬
より3月4日までの間、マガン・ヒシクイの混生群れ14羽(マガン11羽・ヒシクイ3羽)が浦河町東栄
地区で越冬するなど、従来とは違った越冬パターンとなった。


 今シーズン最大の特徴は、日高地区では珍しい例年にない積雪が原因で、過去10シーズン利用
した静内町内の採食場所には殆ど姿を現さなかった。昨シーズンまでは水田の傾斜地や水田のあ
ぜ道など雪が少ない場所を次から次へと探し回り採食をしていたが、今シーズンは桁違いの降雪量
と気温が上昇しないため降り積もった雪が一向に溶けず、採食環境が改善されるどころ継続的に降
り続ける雪と低音により環境は益々悪化したことによる。


 個体数は、12月18日には最大172羽まで確認されたが、1月11日現在、確認されたのは僅か
に約40羽だけで、残り8割の約130羽は、平成18年に入ってからは姿確認もなく、早朝にねぐらか
飛び出す個体数もそう多くは確認されなかったことから、群れの大半は旧静内町を離れて日高管内
或いは道南地区、さらに本州の積雪が少ない場所へと南下越冬をしたと推測される。

 その証拠に、これまで一度も採食場所として立ち寄ったことがない、新冠町高江の泥火山で1月5日
傾斜地であるために積雪量が少ない場所を選んで約20羽が採食をしているのが確認されて以来、
今シーズンの主な採食地となり、更にはねぐらを新冠川にとり、越冬地が旧静内町から新冠町へ変
わったのも、今シーズンの大きな特徴の一つである。


 また、今シーズンは積雪が約30cm以上となることが続いたため、嘴を使っての通常の採餌は不可
能となり、サラブレッドが前足でかき分けて牧草を食した跡に入り込んでは採餌し、それ以外の採食
方法を取ってはいないことから、日高管内ではサラブレッドを放牧している牧場で、競走馬と少ない餌
を求め共存しながらの採食となった。

 
しかし、越冬するには、結氷せずにねぐらとして利用できる河川・湖沼があること。二つ目には採餌
可能な場所があることの二条件が必要で、そのうち一つでも欠けると越冬は不可能であることから、
高管内でもその条件を満たせるのは静内町の静内川、そして浦河町、元浦川と日高幌別川くらい
しかなく、越冬してい
れば野鳥観察体制が確立されている浦河町では100羽以上の群れは直ぐに判
別可能で、確認情報も入
ってくるが、浦河町東栄地区を除いて今シーズン、マガン越冬の確認例情報
はなかった。

 結論として、相当の積雪となり、12月8日から越冬を開始したものの12月17日に172羽を確認し
たのが最大で、それ以降は採食環境が改善されないために12月下旬から静内町内で個体数が減少

し始め、1月に入ると新冠町高江地区に越冬地を移動しその数も約30羽前後と少なかった。

 また、これまで越冬記録がなかった浦河町東栄地区でも1月下旬から3月4日までの間、14羽(マ
ン11羽・ヒシクイ3羽)のマガンとヒシクイが越冬を続けた。

 最大の関心事は、なぜにこの地区で越冬したのか、また、これらの群れが旧静内町での越冬群とど
ような関連があるのかということになるが、少なくても旧静内町ではヒシクイは一羽も確認されていな
かったため、静内町での越冬組とは別の群れと推測される。飛来要素については、ここは海岸部で風
強く降雪があっても風で飛ばされ、積雪とならない地域であることから、採食環境に恵まれた場所を
マガンたちが選んで越冬わ開始したとみられ、幸いすぐ側には元浦川というねぐらに適した河川が存在
したこともあり、越冬が可能となった。

 来シーズン以降、ここで越冬が続けられるかということに関しては、可能性があるなしの双方が考えら
れ今後の推移を見るしかない。

 道内では静内町以外に唯一マガンが越冬している伊達市でも今シーズンで越冬開始7シーズン目と
り、年々越冬数も順調に増えてきていたものの、今年は12月11日の大雪などで、1月中旬でも伊達
市としては記録的な60センチの積雪となり、昨シーズンは105羽が越冬したものが今シーズンは僅
に29羽と激減しているように、採餌環境の著しい劣化により野生動物特有の本能が働き、今年は北

道での越冬は困難と群れが判断し、旧静内町同様に本州へと南下、暖かい宮城県伊豆沼などに移動し

た可能性が高いが、今シーズンは確認されているのが全てマガンであり、過去越冬した希少種のシジュ
ウカラガン、ハクガン、標識鳥などが含まれていないため確認する方法はない。

 また、旧静内町以外でも早朝でのねぐらからの飛び出し、夕暮れのねぐら入り調査による個体数の確
定、さらに採食場所の発見など、鵡川町、門別町、新冠町、静内町での調査も実施したが、越冬状況の
確認には至らなかった。



越冬数(MAX〜172羽
  @旧静内町・新冠町
   ○越冬種類………………マガン(全羽)
   ○越冬期間………………平成17年12月8日〜平成18年2月18日(73日間)
     
    平成17年12月  8日〜 50羽
           12月15日〜126羽
           12月17日〜172羽(最大172羽)
               12月18日〜  72羽 
           12月27日〜120羽
   
        12月28日〜 90羽
           12月30日〜 50羽
    平成18年  1月 6日〜 65羽 
             1月 9日〜 44羽
            1月11日〜 39羽
             1月15日〜 39羽
             1月21日〜 54羽 
             2月 7日〜 30羽 
  
           2月10日〜 18羽
             2月18日〜 15羽 (終認)

  A浦河町東栄地区・共栄地区・野深地区
   ○越冬種類………………マガン、ヒシクイ
   ○越冬期間………………平成18年1月22日〜平成18年3月4日(43日間)
   ○越冬数(抜粋)………14羽  ・マガン〜11羽(成鳥10羽・幼鳥1羽)
                          ・ヒシクイ〜3羽(幼鳥3羽)

 ※静内地区の越冬数は最大で172羽であるが、12月中旬の大雪が根雪となり、採餌環境が悪化したこと
   により、12月下旬より少しずつ越冬地からマガンが減少していき、最後は15羽となった。今シーズンで
   越冬は11年目となるが、越冬数は安定し、渡来数イコール越冬数でありこのようなパターンは過去に一
   度もない。


越冬期間
  @静内町・新冠町
    平成17年12月8日〜平成18年2月18日(73日間)

  A浦河町東栄地区・共栄地区・野深地区
    平成18年1月22日〜平成18年3月4日(43日間)


ねぐら
  @静内町
   
○越冬したガンのねぐらは、静内町では今シーズンも全てが静内川の中州を使用したが、何度か小刻み
     に静内川内を移動した。

  A浦河町東栄地区・共栄地区・野深地区
   ○元浦川

 

採食行動
 @静内町
   
越冬11年目となる今シーズンは、従来の採食地で利用したのはY地区だけで他の地域では採食活動を全く
  行わず、しかも越冬後半の1月に入ってから越冬地を静内町から新冠町に移し、採食の大半は新冠町で採る
  ようになった。

 A浦河町東栄地区・共栄地区・野深地区
   大半は海岸部で降雪の少ない東栄地区・共栄地区
であったが3月に入ると、野深地区でオオハクチョウなど
  と
一緒に行動することが多かった。

  

 

過去のデータ越冬期間・個体数)
 1シーズン目/平成7年1222日〜平成8年3月24日(93日間)
     42羽(マガン41羽、ヒシクイ1羽)
 ○2シーズン目/平成8年1229日〜平成9年2月23日(57日間)
    28羽(マガン28羽)
 ○3シーズン目/平成10年1月6日〜平成10年2月22日(48日間)
     34羽(マガン33羽、シジュウカラガン1羽)
 ○4シーズン目/平成101228日〜平成11年2月25日(60日間)
     48羽(マガン47羽、ヒシクイ1羽)
 ○5シーズン目/平成111221日〜平成12年3月22日(93日間)
     68羽(マガン63羽、シジュウカラガン4羽、ハクガン1羽)
 ○6シーズン目/平成121213日〜平成13年2月22日(55日間)
     54羽(マガン52羽、ヒシクイ1羽、ハクガン1羽)
 ○7シーズン目/平成131129日〜平成14年2月22日(87日間)
    126羽(マガン125羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
 ○8シーズン目/平成141217日〜平成15年2月24日(70日間)
    113羽(マガン113羽)
 ○9シーズン目/平成15114日〜平成16年2月28日(46日間)
    105羽(マガン105羽)
 ○10シーズン目/平成161228日〜平成17318日(81日間)
    148羽(マガン148羽) 
   ※平均値/越冬総数〜76.6羽、越冬期間〜69.0日 




今シーズンの特徴


群れの主な行動
2005
○12月  8日〜Y1地区で採食をしているマガン約50羽を今シーズン初確認

○12月10日・11日〜二日間で約20p程度の積雪となる。(以後、これが根雪となる)
○12月12日〜Y1地区で採食中のマガン100羽以上を確認しているが、群れが一度に渡来して来たのではなく、幾つかの群
          れに分かれて静内町へ来たと思われる。
○12月14日〜この日の早朝、例年利用している静内川付近からのねぐら出は確認できず。
○12月18日〜群れ数は最大で172羽を確認。(全羽がマガン)
○12月19日〜例年にない大雪のため、満足に採食できないことに起因、この日から群れの行動が変化。見えなくなったり群れ
          も幾つかに分散して採食行動をとるようになる。また、採食地も確認することができない日が多くなる。
○12月30日〜約50羽の群れが採食しているのを確認。このことから現在は、4〜5の群れに分散して採食していると思われる。

2006年
○ 1月 3日〜一日、群れを追っての調査をするが、確認することができなかった。予測されることは、ねぐらとする静内川は結
          氷はしていないため、ねぐらは従来と変わらずに静内川であるものの、採食場所は静内町内ではなく、新冠町及
          び西側、そして、過去にもあったように静内川より東側にも可能性がある。
          町内はまだ、全域にわたって約30pの積雪があるため、風が強く積雪となっていない場所。若しくは何らかの
          事情により積雪が少ない場所を探し、採食環境の良い場所で採食活動をしているものと予想される。また、群れ
          も幾つかに分散しており、裏を返すと全羽172羽が一同に集結して採食する場所がないということ。
          いずれにしても、観察を始めた1995年以降、越冬が今年で11シーズン目となるが、集中的な積雪は過去に例
          がなく、マガンにとっても採食条件がこれだけ悪化したことすがないため、劣悪な状況下での採食となっている筈
          である。
○ 1月 8日〜群れを確認出来ているのは約30〜80羽で、シーズン初めに確認している172羽の半数以下である。残りはど
          こへ行ったのかであるが、相変わらずに4〜5の群れに分散しているようで、その内、静内町には不定期に30〜
          80羽
がY1地区に飛来するのみで、従来の採食場所にも飛来は確認できていない。
          また、本日、マガン越冬11シーズン目にして初めて新冠町で採食している群れ(16羽)を確認しており、未確認
          ではあるが、大半が採食条件の良い新冠町で採食活動を行っているものと思われる。
          ここ数日、気温は下がり続け、日中でも5〜6度であつたり、夜は軽く−10度を越える日が続いているため、一
          向に融雪が進まず、マガンにとっても採食条件は改善されず、食糧難に陥っている日が続いている。
          
また、1月5日の調査では、新冠町〜新冠川、門別町〜厚別川・慶舞川・沙流川、鵡川町〜鵡川は河口域はほ
          ぼ完全結氷で、
ねぐらには使用不可能と思われる
ことから、静内川を拠点として越冬を続けているが、採食場所
          は静内町以外にも求め、群れがばらついての活動となっている。
○ 1月 9日〜<本日現在での考察>
          ○ねぐらの確定
            ・ねぐらが、本当に静内川中流域一箇所なのかを精査するため、静内川歩道橋、新冠町との境界の2箇所でね
              ぐら入りする群れを待機したが、確認は出来なかった。一日では確定はできないが、可能性は低いということ
             と更に継続した調査で確定させる必要がある。
            ・新冠川の河口域から数キロ地点は、以前からハクチョウがねぐらとしている中州があり、今日現在、その場所
             では結氷してはいなく、今後もする確立も低いことから今後、ねぐらとして利用されていないかを調査する必要
             がある。
          ○採食場所の確定
            群れ総数が172羽が確認されているが、Y1地区で44羽を確認した以外は未確認であり、その群れはどこへ
            行っているのかを確定させる必要があり、それにはねぐら入り、ねぐらからの飛び出し方向で確認するしかなく、
            その調査での精度を高める必要があるが、それにはそれ相当の人員が必要である。
          ○越冬個体数の確定
            現時点での群れ総数が以前に確認されている172羽がmaxか、そうではないのかを確定する必要がある。
          ○新冠町・泥火山での採食状況(確認事項及び牧場主からの聞き取り)
            ・1月4日頃からマガン群れが20〜30羽程度来るようになった。今まで一度も来た事はないが早朝、サラブレ
             ッドを放牧させようと外に出るといつも来ている。1月9日も朝はいたが、その内、いなくなっていた。
            ・山頂付近及びその斜面、道道沿いに融雪地帯があり、そこに集中してマガンの糞が散乱していた。糞の数か
             ら推測するとそう多くの個体数が採食をしている状況ではない。
            ・いずれにしても、ここで採食する個体数は今後も多くはないと思われ、他の場所で大半のマガンが採食をして
             いると思われる。
○ 1月11日〜12:45、Y1地区でマガン39羽が新冠町側より飛来するのを確認。このことから次の事項が考えられる。
          ○不定期ではあるが、Y1地区で39羽〜44羽が採食する。最近で採食が確認されている群れと採食場所はここ
            のみである。
          ○群れが新冠町側から飛来して来たことにより、この群れはY1地区と新冠町側での採食地を往来していると考え
            られる。また、新冠町側の採食場所はH地区の可能性が極めて強い。
          ○今日の観察で気づいたことであるが、静内町、新冠町共に数十センチの積雪があり、これだけの積雪となるとマ
            ガンが自力で雪を掘り返して牧草を掘り返すのは困難である。従って、行方が分からない残りのマガンが採食し
            ている場所は、サラブレッドと共存しなければ採食活動が成り立たないため、必然的にサラブレッドが居る場所と
            推定される。
○ 1月12日〜<静内町及び静内町以外の状況>
          ○静内川以外のねぐら候補及び採食地として日高管内では最も可能性がある浦河町・日高幌別川周辺での確認
            例を浦河町春田さんに照会するも、今シ
ズンは浦河町では誰もマガンを見た人がいないとのこと。
          ○北海道では、静内町以外で唯一越冬地である伊達市の篠原さんにも照会するが、下表のとおり年々増えていた
            マガン越冬数も今年は例年にない降雪・積雪のため29羽が越冬するだけで激減している。
           
 ・越冬1シーズン(平成11年〜平成12年)〜マガン  3羽
             ・越冬2シーズン(平成12年〜平成13年)〜マガン  5羽
            ・越冬3シーズン(平成13年〜平成14年)〜マガン 21羽・オオヒシクイ2羽
            ・越冬4シーズン(平成14年〜平成15年)〜マガン 59羽
            ・越冬5シーズン(平成15年〜平成16年)〜マガン 76羽

             ・越冬6シーズン(平成16年〜平成17年)〜マガン105羽
             ・越冬7シーズン(平成17年〜平成18年)〜マガン 29羽(平成18年1月12日現在)
           ○静内町での今シーズンの個体数を見ると下表のとおりであるが、12月17日の172羽を最大に以後、徐々に減
            少していることから、伊達市での例と同様、採食環境の著しい劣化により野生動物特有の本能が働き本州へと
            南下した可能性が強い。

             ・平成17年12月 8日〜 
50羽、 12月12日〜 50羽 12月15日〜126羽 
                   12月17日〜
172羽、 12月18日〜 72羽、 12月21日〜 80羽
                   12月27日〜 120羽 12月28日〜 90羽
 12月30日〜 50羽 
            ・平成18年 1月 6日〜
 65羽、  1月 7日〜 60羽
  1月 8日〜 80羽

                     1月 9日〜 44羽、   1月11日〜 39羽 
○ 1月15日〜今まで未調査地区となっていた新冠町高江地区及び節婦地区。静内町真歌地区及び御園、豊畑地区中心に調査
          をしたが、Y1地区で44羽は確認した以外はマガン群れを確認することは出来なく、新冠町、静内町での越冬個体
          数は全44羽で生息地域もY1地区及びその周辺に限定される確率が高い。また、昨日と同様に今日も一転しての
          気温が上昇し周辺の融雪は進んだ。
          また、Y1地区の44羽は39羽と5羽の二つの集団から成り立っているようでいつも5羽が別行動していることが多
          い。
          採餌方法は、雪が深く自力で採餌することができないため、サラブレッドが前足で雪をどけた後、その跡に腰を落と
          して採餌をする方法であるが、しばらくはこのスタイルが続く。
○ 1月21日〜<本日の観察で判明したこと>
          ○越冬群れ総数を最大54羽までを確認。最近の個体数が44羽と想定していたが、10羽多いことが判明。
           ○新冠町泥火山で早朝より採餌する14羽のねぐらは、飛来するコースから新冠川中流域と推測される。
          ○今現在の採餌の中心はY1地区で、ここをベースに10〜20羽の群れが絶えず分散、集合を繰り返している。
○ 1月23日〜マガン観察を始めて今シーズンで11年目となるが、昨日と今日の観察結果は、11年前に初めてマガンを発見以
          来の大きな出来事である。それは浦河町荻伏町東栄地区で22日にマガン11羽、ヒシクイ3羽を発見。更に23日、
          今度はヒシクイだけの12羽の群れを確認できたことである。今後の調査を待たなければ分からないことが多いが、
          本日現在、考察できる事項は次のとおり。
          ○22日に確認したマガン1羽(成鳥)・ヒシクイ3羽(成鳥1羽・幼鳥2羽)及びマガン10羽(幼鳥)計14羽の群れ
            は静内町で越冬していたグループの確率が高い。
          ○昨日までは完璧にそうだと確信していたが、本日、ヒシクイのみで12羽を確認した事実を考慮すると、果たして
            そうだと言い切れるかとの疑念が出て来る。
          ○マガン、ヒシクイ共に共通して事実関係を精査したい事項は、これらが越冬組なのか或いは早い時期での渡りの
            群れなのかであるが、本日の調査ではガン類のかなり古い糞が発見されたことから、その内か全羽が浦河町荻
            伏町東栄地区で越冬をしていた可能性が高い。
          ○ヒシクイがなぜ、浦河町荻伏町東栄地区に居るのかについては、時期はともかくこの沢奥には、日高管内有数の
            ヒシクイの渡りルートである浦河町荻伏町富里地区があるので、存在することの確率と理論的には十分に説明が
            つく。
           ※それにしても、昨日と本日の発見は大変に興味深いもので本格的な調査には十分に値するものである。このよ
            うな予期せぬことが起きるから大変ではあるものがマガン観察を含めた自然観察は面白い。

○ 1月28日〜浦河町荻伏町共栄・東栄地区を含む荻伏地区全体調査(瑞穂、野深、上野深、姉茶、富里)。今日の目的はヒシク
          イ12羽の群れを確認することであったが、結果は、ヒシクイ群れを発見できず。以下、主な調査結果事項
          ○積雪量及びサラブレッド放牧数から考察すると現在、採餌可能となる地域は以外に少ないことが判明し、マガン
           ヒシクイが生息可能であるのは荻伏地区全体では海岸線の共栄地区、東栄地区に限定されると思われる結果、
           確認された個体数は1月22日に発見された14羽と同様であったことから、現時点での荻伏地区全体での越冬数
           は14羽(マガン11羽、ヒシクイ3羽)である確率が高い。
          ○Bポイント(東栄地区)の土地所有者である山田牧場に聞くと、ここにマガンたちが来たのは今年に入ってからで、
           1月10日頃からだということが判明した。では、この群れはここに来る前はどこにいたのだろうか?。
          ○一月下旬となり、気温が2〜3度で大変暖かく、今後、静内町、浦河町も融雪が進むと思われる。
          ○浦河町荻伏町共栄及び東栄地区では積雪が大変少ないものの、沢奥の瑞穂、野深、上野深、姉茶、富里の各
           地区は20〜30cmの積雪で沢奥へ入れば入るほど、積雪は比例して多くなっていた。
          ○荻伏地区はオオヒシクイの渡りのルートとなっており、春・秋にはシーズンによって数の変動があるものの数百
           羽が富里地区を中心に確認している。
          ○この日だけで元浦川でのオジロワ5羽、オオワシ2羽の計7羽が確認され、サケの遡上が多い河川として知られ
           ているが、本格的な調査をすれば15羽程度の個体が確認されると思われる。


○ 2月 4日〜ここ数日、静内町も午前9時で−8℃を記録するなど気温が下がっているが、本日、立春というのに八丈島でも60
          年振りに雪が降るなど全国的な寒波は衰えを知らず。マガンたち野生動物もその余波を諸にかぶって各地での越
          冬状況にも異変が続出している。
          Y1地区、新冠町泥火山では調査時間に限って言えば、2月に入ってからは静内町、新冠町ではマガンを一羽も確
          認できず。これはこの地区からマガンが飛び去ったのではなく、2月に入ってから量は多くはないものの数日間、降
          雪が続き採餌環境が悪化したことにより採餌場所を移動したものと思われる。確認してはいないが恐らくH地区で
          採餌をしているものと推測される。
         


2005〜2006年度・全国マガン渡来状況