「静内町マガン越冬10シーズン目記録」
     
          【越冬期間/平成16年(2004)12月28日〜平成17年(2005) 3月18日】 
     




 



      
 
 

静内町でマガンが越冬して今シーズンで10年目になったが、ここ数年間、全国的に続いている
天候異変は静内町においても同様で、1月までは比較的温暖であったが、2月以降は気温も下が
り寒く、全てがこの要因によるとは断定できないものの、今シーズンも従来とは異なる越冬パター
ンで幾つかの特徴をもった越冬となったが、以下、それを記してみる。

昨シーズン、早ければ11月下旬、平年でも12月中旬には静内町へ渡来していたマガンが一向
に姿を見せず、年明けの1月14日ようやくウトナイ湖より静内町へと移動、今までで最も遅い渡来
となったが、今シーズンは昨年同様、静内町への渡来は遅く12月28日となった。しかし、その後、
しばらく群れを確認することが出来ず結局、群れを発見できたのは二週間後の1月12日となった。

静内町での越冬は、越冬5年目〜3月22日、越冬6年目〜2月23日、越冬7年目〜2月22日、
越冬8年目〜2月24日、越冬9年目〜2月28日とこの4年間、2月下旬には越冬を終了していた
が、越冬期間が5シーズン振りに3月中旬までに延びた。

理由については幾つか考えられるが、大きな要因は積雪と考えられる。静内町は海洋性気候で
冬でも降雪量が少ないという特徴を持つが、今年は2〜3月、特に3月に入ってからの降雪は極め
て多く、しかも、次の越冬(採食)場所となっている鵡川町でも同様の積雪となり、例年のとおり2月
6日〜9日の三日間、マガン群れが静内町から鵡川町へと偵察行動も含めて移動してみたものの、
降雪で採食環境が整っていないために、結局は静内町へと舞い戻り、3月18日までの越冬となっ
たと推察される。

次は、越冬場所の変更で12月下旬に静内町で何度か群れを確認したがその後、従来の採食地、
ねぐらのいずれにおいても確認できず、1月12日になり群れを発見した。この間、どこで越冬して
いたかは判明せず、従来、採食地は不明であってもねぐらだけは確認できたという例があったが、
そのねぐらが未確認であったことから静内町以外で越冬したと考えられる。

また、越冬数は過去最大の147羽となったが、気象条件が似ている伊達市でも平成11年からマ
ガンが越冬を始め、その越冬数が初シーズン3羽だったものが、越冬6シーズン目となる今シーズン
は105羽までに越冬数が増えている例のように、他地域と比較するとその増加率は極めて低く、こ
の10年で百羽程度の増に留まっている。

これについてはその年にもよるが、積雪と気温が下がるため劣悪な採食環境。大きな湖がないた
め完全に周囲を水で囲むことが出来ないことによるねぐら環境の悪さ。年々、異常気象により激変
する気象条件等、幾つかの要素が推察できるが、確定するには至ってはいない。

まとめると、地球温暖化現象に起因し静内町でマガンが平成7年より越冬を開始してから10シー
ズンを経過。シーズンにより越冬個体数、種類、採食地等の越冬パターンを毎年変化させながらも
越冬行為が継続されたことにより、従来、マガン越冬の北限とされてきた宮城県伊豆沼より約400
km離れた北海道静内町でのマガン越冬は完全に定着したと言える。

今後、この越冬がどのような推移をたどるのかは予測がつかないが、少ない数とは言え毎年、越
冬数が増えていることから個体数は年々、増加が予測され、更に伊達市においても平成11年から
マガン越冬が始まり今シーズンは105羽が越冬したように、地球温暖化が続く限り、
静内町、伊達
市以外の地域でも越冬例が増えていく確率は高いと思われる。

なお、ハクガン、シジュウカラガン等の希少種は確認されなかった。



越冬数(MAX〜147羽)
 ○平成16年12月10日〜ウトナイ湖周辺でマガン約350羽を確認。
 ○12月17日〜ウトナイ湖周辺でマガン総数470羽を確認。鵡川町でも28羽を確認。

 ○12月28日〜静内町で早朝にマガンの鳴き声を確認。夕方、ねぐら入りする群れを確認するが個体数
           は不明。

 ○1229日〜静内町では群れを確認できず。
 ○平成17年1月3日〜早朝にマガンの鳴き声を確認するが個体数は不明。
 ○ 1月12日〜マガン約120羽を肉眼で確認。
 ○ 1月15日〜ねぐら入りを確認、約150羽を肉眼で確認。
 ○ 1月20日〜肉眼で136羽を確認。
 ○
1月22日〜写真で147羽を確認。
 ○ 1月26日〜肉眼で48羽と86羽、二つの群れ計134羽を確認。
 ○ 2月 9日〜浦河町で2羽を10日まで確認。
 ○ 2月16日〜写真で145羽を確認。(1月22日確認した147羽から2羽が減少したのは浦河町で確認
           された2羽分が関係していると思われる)
 ○ 2月26日〜肉眼で59羽、75羽の二つの群れ計134羽を確認。
 ○ 2月27日〜肉眼で48羽、87羽の二つの群れ計135羽を確認。
 ○ 3月 4日〜肉眼で35羽と28羽、二つの群れ計63羽を確認。
 ○ 3月 5日〜肉眼で76羽の群れを確認。
 ○ 3月 6日〜ウトナイ湖で12羽の群れを初認。
 ○ 3月 9日〜肉眼で67羽を確認。鵡川町で約240羽を確認。ウトナイ湖で42羽の群れを確認。
 ○ 3月10日〜肉眼でマガン69羽、ヒシクイ2羽を確認。鵡川町で約1,360羽を確認。
 ○ 3月12日〜肉眼で125羽を確認。
 ○ 3月14日〜肉眼で数十羽を確認。
 ○ 3月16日〜肉眼で142羽を確認。
 ○ 3月17日〜肉眼で約140羽を確認。鵡川町で約1,360羽を確認。
 ○ 3月18日〜肉眼で約140羽がねぐらを飛び出すのを確認。これが大きな群れの今シーズン最後の確認。
 ○ 3月19日〜2羽を確認。
 ○ 3月20日〜マガン1羽、ヒシクイ19羽を確認。鵡川町で約2,010羽を確認。
 ○ 3月21日〜町内ではマガンを確認出来ず。ヒシクイ18羽を確認。鵡川町で約1,950羽、ハクガン3羽を
           確認。
 ※越冬数は最大で147羽であるが、1月15日、肉眼で約150羽を確認しており、その後、肉眼での確認数は
  最大でも140羽となっているが、地上での肉眼観察では凹凸があったり個体が移動するなどの要因により、
  正確な個体数は物理的に困難である。多少の増減はあるものの3月18日にも肉眼で約140羽をカウントし
  ていることから今シーズンの越冬数を147羽とした。
 ※個体数の確認方法については、通常は肉眼でプロミナーを通しての観察となるが、この方法では正確にカウ
   ントすることに限界があるため、群れが上空へと飛び出した際に写真撮影し、カウントする方法をベースとし
   ている。

 

越冬期間
  ●平成16年12月28日〜平成17年3月18日(81日間)

 

ねぐら
   越冬したガンのねぐらは、静内町では今シーズンも全てが静内川の中州を使用したが、静内町での群れが
  確認出来ない期間が約二週間あり、当然のことながらこの間のねぐらについても不明である。

 

採食行動

越冬10年目となる今シーズンの特徴は、採食場所の変化で昨シーズン使用した地区での採食活動は少なく、
逆に越冬1〜2シーズン、採食地として使用した地区でシーズンを通して頻繁に採食を行った。

  また、ねぐら入りの際、群れの飛行コースから採食地もある程度、推測できるが今シーズンは1月15日、従
来の方向からではなく全く反対方向から群れが入って来たため、過去9シーズンでは使用しなかった採食地を
使用していた可能性が高い。その後、推測される各地区を調査したがその形跡を発見するには至らなかった。

  2月下旬には過去9年間に一度も活動を行ったことのない地区でも採食が確認されているが、これについて
は、状況的には度重なる降雪で積雪が激しくなりこの地以外での採食が不可能となったために群れが仕方なく
取った行動と思われる。

  更に、過去のシーズンでは、採食物が2月までは牧草等の草であったが3月に入ると水田の落穂、稲ワラ等
に変化した例があったが、今シーズンは終始、牧草、水田あぜ道の雑草等の草で米類は食さなかった。

  また、2月以降、静内町としては季節外れの降雪により採食場所が一定しなかったことで、傾斜地など積雪が
少なかった場所を次から次へと探し回っての採食となつた。

 

過去のデータ越冬期間・個体数)
 1シーズン目/平成7年1222日〜平成8年3月24日(93日間)
     42羽(マガン41羽、ヒシクイ1羽)
 ○2シーズン目/平成8年1229日〜平成9年2月23日(57日間)
    28羽(マガン28羽)
 ○3シーズン目/平成10年1月6日〜平成10年2月22日(48日間)
     34羽(マガン33羽、シジュウカラガン1羽)
 ○4シーズン目/平成101228日〜平成11年2月25日(60日間)
     48羽(マガン47羽、ヒシクイ1羽)
 ○5シーズン目/平成111221日〜平成12年3月22日(93日間)
     68羽(マガン63羽、シジュウカラガン4羽、ハクガン1羽)
 ○6シーズン目/平成121213日〜平成13年2月22日(55日間)
     54羽(マガン52羽、ヒシクイ1羽、ハクガン1羽)
 ○7シーズン目/平成131129日〜平成14年2月22日(87日間)
    126羽(マガン125羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
 ○8シーズン目/平成141217日〜平成15年2月24日(70日間)
    113羽(マガン113羽)
 ○9シーズン目/平成15114日〜平成16年2月28日(46日間)
    105羽(マガン105羽)
 ○10シーズン目/平成161228日〜平成17318日(81日間)
    148羽(マガン148羽) 
   ※平均値/越冬総数〜76.6羽、越冬期間〜69.0日 




:群れの主な行動
 ●12月28日〜マガン鳴き声と群れの確認姿を確認。その後も鳴き声を確認するが、従来までのねぐら・採食
           地では未確認。また、個体数等の詳細も不明。

 ● 1月12日〜今シーズン初めて、マガン群れの昨シーズンまでの採食地での確認が出来、ほっとする。肉眼
           で確認出来た個体数は約120羽程度。

 ● 1月15日〜従来の採食地では群れを未確認であったが、従来とはまったく違う方向からのマガン群れねぐ
           ら入りを静内川中流域で確認。個体数は150羽前後。

 ● 1月16日〜従来の採食地及び推測される採食地を観察するが、群れを未確認。また、昨日とは反対方向か
           らのマガン群れねぐら入りを静内川中流域で確認。個体数は150羽前後と思われる。
 ● 1月21日〜従来の採食地での採食活動が確認され、ようやく昨シーズンまでの越冬パターン
となる。また、
           ねぐらはその日により数百m単位で移動している様子。
 ● 1月22日〜採食する群れが上空へと舞い上がった時に撮影した写真により群れ数
のカウントで147羽を確
           認。

 ● 1月25日〜降雪量が多く、これまでの牧草地での採食が不可能となったため、牧草から水田あぜ道の雑草
           へと主食が変化する。また、雪解け状態の良い場所を見つけて採食するため、採食地を4〜5km
           移動する。

 ● 1月27日〜この日より、降雪が少なく採食活動が容易なK4での採食が続く。地上での群れ数は肉眼で138
           羽であるが、実際はこれ以上の個体数と思われる。

 ● 2月 1日〜静内町としては珍しい降雪量のため、採食地を探して異動を繰り返す。
 ● 2月 6日〜この日よりマガンの姿を確認出来ず。行く先は不明であるが例年のごとく二月に入り行動範囲が
           広がり活発化した証。しかし、姿が見れないのは寂しい限り。

 ● 2月 9日〜数日振りにマガン群れを確認。この日の採食場所は従来と大きな変動はなし。
 ● 2月10日〜9日から10日まで、浦河町、日高幌別川でマガン2羽が確認される。昨シーズン、カリガネ1羽と
           一緒に越冬した2羽のペアの可能性が高い。また、この時期、そろそろマガンの国内移動が始ま
           ったことも考えられる。

 ● 2月19日〜さすがにこの時期ともなると群れ行動範囲が広く、不定期、不安定となり群れを探すのに一苦労。
           幾つかある今冬の特徴として、今日も昨日に引き続き上空での風が強く日高山脈がくっきりと見え
           る日が多い。また、二月に入り低温と静内町では珍しく降雪が続き、暖冬であった一月までとは様
           変わりの天候が続く。また、幾つかのグループに分かれての採食を始めた
 ● 2月26日〜22日以来、4日振りに群れを確認。最初に確認された場所はこれまでに一度も確認されたことが
           ない箇所で、日当たりが良くここだけは融雪が進んでいる。恐らく確認出来なかった日もここで採
           食していた可能性が高い。町内全域で積雪しており、少しでも採食可能な箇所を見つけて採食行
           動をとっていると思われる。
           また、鵡川町、ウトナイ湖周辺も例年になく積雪が多いことから当分の間は静内町での越冬が続く
           と思われる。群れ数は59羽、75羽の二つの群れ合計134羽。

 ● 3月 1日〜5シーズン振りに3月に入ってからも群れが静内町で採食することとなり、嬉しい限り。
 ● 3月 7日〜一週間前から場所を変えずに採食を続ける。また、一気に気温が上昇し融雪が進み採食環境が
           整う。鵡川町、ウトナイ湖も静内町以上の積雪であり、まだ10日間程度は静内町で越冬すると予
           想している。

 ● 3月 9日〜シーズン後半は寒い冬を象徴するかのように昨夜からの降雪と気温が午前8時で4度と寒い。静
           内町での越冬個体数は67羽。また、ウトナイ湖で42羽、鵡川町で約240羽のマガンを確認したと
           の情報あり。時期的にそろそろ国内移動が始まる頃なので、北帰行が始まった。
 
● 3月11日〜群れ総数69羽を確認。
 ● 3月12日〜今シーズンの特徴である季節外れの湿った大雪が昨夜来からあり、かなりの積雪となる。不思議
           なことに群れ数が125羽となるが、これが静内町近辺にいたものか、或いは渡りの途中での合流
           なのかは不明。

 ●3月16日〜神森地区で群れ142羽を確認。採食地を移動したようだ
 ●3月18日〜午前6時57分に約100羽、午前7時20分に約40羽の140羽がねぐらから飛び出した後はマガン
          群れを確認できず。

 ●3月21日〜この日も18日以降、マガンの大きな群れを確認出来ず。今シーズン越冬も終了。